「CES」で見えた「ソニー電気自動車参入」の本気度 吉田社長が重視してきた「人に近づく」の真意
アメリカ・ラスベガスで開催されたテクノロジー見本市のCESで1月4日、ソニーグループ会長兼社長CEOの吉田憲一郎氏は電気自動車(EV)産業への参入を本格的に検討開始すると話した。
ソニーグループは2年前にセダン型のコンセプトEV「VISION-S 01」を発表していたが、今回のCESではSUV型コンセプトEV「VISION-S 02」を展示、今春にソニーモビリティ株式会社を設立すると発表した。
この発表を受け、ソニーグループ株は一時およそ5%も上昇した。現在は発表前のレベルに戻っているが、EVへのソニー参入は大きなインパクトを残した。
実際にソニーのバッジをつけた自動車が販売されるまでには、まだしばらくの時間がかかるだろう。しかし、それ以外の展示にも目を向けると、「電機メーカーが本業だったソニーグループが自動車メーカーとして競争力を持てる時代」という産業イノベーションとして視点以外にも、さまざまな形で“ソニーグループの進化“が顕れている。
吉田氏は社長に就任以来、「ソニーの存在意義は何か」について深慮していると話してきた。積み上げてきた技術やノウハウが、どのような形で活かせるのかを、これからの社会に適合する形へと変えていく。そうした本質的な領域でのソニーの再構築を進めていた。
2018年の社長就任からすでに5年近く。取り組んできたソニー再構築の成果が、現れ始めている。
見つめ直した「顧客との距離感」
2021年4月にソニーからソニーグループへと社名変更し、ソニーの名称はエレクトロニクス専業の子会社に引き継がれた。この発表を昔からのソニーファンは寂しく感じたかもしれないが、エレクトロニクス事業を軽視しているという訳ではない。
組織変更の意図は、グループ内にさまざまな形で存在する事業価値を同列に並べ、事業間のシナジーを促す目的だった。
ゲームや音楽、アニメといったコンテンツ事業の利益貢献が大きくなっているソニーグループだが、そうした表層に現れる部分ではなく、社会あるいは産業の中における「パーパス(存在価値)」を模索してきた。
中でも吉田社長が重視してきたのが、「人に近づく」ということだ。筆者自身、吉田社長に取材し始めた頃は、その解釈に戸惑った記憶がある。
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