「CES」で見えた「ソニー電気自動車参入」の本気度 吉田社長が重視してきた「人に近づく」の真意

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アンチャーテッドはトレジャーハンターの主人公が秘境を旅しながら、幻の宝物を探すアクションゲームだが、このゲームを元にした大作映画が2月から公開される。

通常ならば映画としての表現を追求したのちに、ゲーム会社にライセンスされ、まったく別の作品として映画原作のゲームが制作される。しかしアンチャーテッドの場合は制作プロセスが大きく異なる。

ソニーグループは原作ゲームであるアンチャーテッドのパブリッシャー親会社であり、また映画会社、撮影に付随する3D映像制作などの技術サポート、ゲーム機、ゲーム制作スタジオ、音楽制作などをグループ内に持つ。
アンチャーテッドの場合、ソニー・インタラクティブエンタテインメントの子会社でアンチャーテッドシリーズの開発元のノーティードッグが映画制作に関わり、原作ゲームの世界観を作り上げるために協力している(映画公開同時期にPlayStation 5向けにリマスターされたゲーム版アンチャーテッドもリリースされる)。

そのトレーラー映像(https://youtu.be/lG-svqXKIhw)を観ると、ゲーム中にある、ギリギリのタイミングと距離感でピンチをすり抜けていく主人公のアクションは、極めて高画質なゲームのライブ配信のようにも見える。

全編が公開されるのはまだ先だが、単なるゲームから派生した新しい物語ではなく、完全に原作ゲームの世界観を映画として表現しているように見える。

クリエーターに近づくことで生まれるプロダクト

バーチャルプロダクションだけではない。

高画質シネマカメラのVENICE 2は、大型の超高感度センサーと使いやすさで映画制作の常識を変えるほど撮影領域を広げている。

αシリーズを用いて高画質かつ安定した撮影ができるドローンのAirpeak S1も、飛ばせる場所や安定性、周辺デバイスの充実度などがプロフェッショナルのクリエーターに評価されている。

2021年末にリリースした高性能ドローン「Airpeak S1」(写真:ソニーグループ)

カジュアルな領域では、1インチセンサーを搭載するスマートフォン、Xperia PRO-Iは、部分的に作品作りに使えるまでのレベルに達してきた。画質とコンパクトさのバランスという面で、映像制作の幅を広げる存在になるだろう。

「創造力の制約」からクリエーターを解放することで、ソニーの技術を使いたいと感じてもらうことを念頭に作られたからこそ、これらのプロダクトが生まれた。

そうした意味では、PlayStation 5の成功もゲームクリエーター、ゲームプレーヤーの両方に近づき、ニーズの本質を理解した事例とも言えるだろう。

今回のCESではコントローラー、画質などを一新し、視線入力などの新しいアプローチも備えたPSVR2が発表された。PSVR2の詳細と、最新のコントローラ、視線追跡技術とその応用例などについては今後、取材をしたいところだが、クリエーターの表現力の幅を広げるという意味で、近年のソニーの路線を踏襲していると言えるだろう。

次ページリアルとバーチャルをつなぐソニーの技術
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