「CES」で見えた「ソニー電気自動車参入」の本気度 吉田社長が重視してきた「人に近づく」の真意

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「CES 2022」で発表するソニーグループ会長兼社長CEOの吉田憲一郎氏(写真:ソニーグループ)

吉田社長の言う「人に近づく」は、ケースバイケースで異なるニュアンスが含まれるが、コンシューマーやクリエーターなど、ソニーの顧客たちにソニーの側から近づいていくことだ。

一方で現在のソニーグループの事業は多様化し、映画やドラマ、音楽、金融商品、ネットワークサービス、ゲームコンテンツなどソフトウェアの領域が大きくなっている。ハードウェアに関しても、サービスとの連動やソフトウェアやサービスによってパーソナライズ(個人の嗜好に合わせた調整、カスタマイズ機能)されるのが当たり前の時代だ。

ソニーグループが内包する技術やノウハウを見つめ直し、これからの社会に適合するように再構築し、顧客にとってより身近で心地よい体験価値とする。そんな顧客との距離を縮めるための組織改革だったとも言えるだろう。

その効果がわかりやすい形で顕在化したのが、CESでの発表に現れているといえそうだ。

エンタメ分野ではすでに成果も

エンターテインメントのジャンルでは、すでに成果は出始めている。

吉田社長は2年前、ソニ―の存在意義として「クリエ―ティビティ―とテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」というテーマを掲げていた。

「Crystal LED」は、RGB各色のLEDを整列させ、個別に発光を制御する。パネルを多数並べることで巨大ディスプレーを構成できる。みなとみらいの資生堂グローバルイノベーションセンター(S/PARK)に設置されたCrystal LEDは等身大の登場人物や動物などが登場する巨大なものだが、CES 2022にはS/PARK設置ディスプレーに迫る縦5メートル、横12メートルの巨大ディスプレーが設置された。

CESで展示された、Crystal LEDを用いた映像制作環境「バーチャルプロダクション」(写真:ソニーグループ)

製品の販売や設置サービス、コンテンツ制作などだけならば、従来の事業と変わらない。しかしソニー・ピクチャーズのイノベーションスタジオが開発したバーチャルプロダクション技術を組み合わせると、撮影場所や天候への依存などさまざまな制約から解放される。

バーチャルプロダクション技術の中には、スタジオセットを3次元データとしてスキャン、データとして保存する技術も含まれており、撮影セットを解体した後にも再撮影が可能になるなど、映像クリエーションの常識を変える要素が多数ある。

昨年、アップルがドルビーと3Dオーディオによる音楽配信を始めたが、それより以前からソニーは360 Reality Audioとして、新しい音楽を創造する環境を提供していた。

イギリスの歌手アデルが最新アルバム「30」を制作する際にソニーが協力したことに言及していたが、よりわかりやすいのはPlayStation向けの定番ゲームシリーズであるアンチャーテッドの事例だろう。

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