ソニー・ホンダ新EV「世界と戦える」と期待できる訳 プレゼンから見えてきたモビリティー戦略

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さてソニーの公式字幕では3番目の要素のAffinityを親和性と訳していましたが、この言葉の本来の意味は、親しみやすさ、親近感です。

その観点ではアフィーラのプロトタイプのフロントに設置されるメディアバーが目をひきます。車体の外側に細長いディスプレイが設置され車外に向けてクルマの様子が表現されるというのですが、正直「どういう意味?」と感じた方が多かったのではないでしょうか。

クルマが感情を持つ存在になるかもしれない

クルマの内外の情報を外部の人たちにもつなげるというアイデアで、メディアバー自体の使い方はこれから外部のクリエイターの人たちと一緒に考えていきたいということですが、その後に映し出されたペットロボットの「aibo(アイボ)」の映像がその用途のヒントになるように感じました。

新しいaiboはAI学習しながらクラウドにつながり、日々進化するペットロボットです。それと同じようにクラウドにつながるクルマも、aiboのような感情を持つ存在になるかもしれません。

快適なドライブならご機嫌になりますし、渋滞ならクルマの機嫌も悪くなるでしょう。後ろを走るクルマが不機嫌だということがわかれば、前を走る私も慎重にクルマを運転するようになるかもしれません。

機嫌が悪い場合、車内には5Gで何かが降りてくる可能性もあります。ソニーのクルマですから、例えば、「日向坂46」の気分が明るくなる楽曲が流れてくるような体験が提供されるかもしれません。

③ソニー・ホンダの可能性はそれだけなのか?

さて、ソニーのプレゼンテーションの終盤に登壇したクアルコムのクリスティアーノ・アモンCEOに対して、ソニーの吉田CEOが「この協業についていちばん興奮しているのはどのような点か?」とたずねたところ、

「ソニー・ホンダがモバイルからモビリティーへの技術進化について最も深く理解しているパートナー企業だという点だ」

という答えがありました。アモンCEOはクルマがクラウドにつながることを前提とした未来の可能性について抽象的にしか語ってはいません。

私もCESの場での大企業のプレゼンテーションの設計をお手伝いしたことがありますが、わくわくするような内容でも企業秘密でまだ外に出せない事柄がいっぱいある中で、抽象的に何を語るのかに腐心した記憶があります。ソニー・ホンダについてはまだまだ語れないことがたくさんあるのでしょう。

ただ、今回のプレゼンテーションを通じてわかったのは、ソニー・ホンダのキーワードは「クルマ」ではなく「モビリティー」だということです。抽象的にいえば、クルマを売るビジネスではなく、モビリティーまで概念を拡大することで市場は広がり、優位性は強まり、企業としての収益性も大きくなるということでしょう。

その観点でいえば、「移動から車内の感動体験へ」というのも1つの解ではありますが、世界のEV陣営が狙っているのはモビリティー社会そのものの進化です。

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