ホンダ「S660」は、いったい何がスゴいのか 26歳の責任者が開発した新世代スポーツカー

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向かって左から、椋本陵(開発責任者)、坂元玲(衝突安全プロジェクトリーダー)、瀬田昌也(アシスタントプロジェクトリーダー)

折角、楽しそうなスポーツカーを前にして、御託を並べるのは野暮というもの。早速、スタートボタンを押して、車体中央に搭載されるエンジンを目覚めさせる。いわゆる「ミッドシップ」だ。スーパーカーのような甲高い音や野太い唸り声というわけにはいかないが、シュンッと軽快な音を立てるのは軽のスポーツカーらしくて好印象だ。

1周目からかっ飛ばすのではなく、まずは乗り心地の良さを体感する。S660のために完全に新設されたボディは、サイドシルやセンタートンネルといったボディ剛性を高めるために重要な部分に大きな断面を作ることにより、軽くかつ剛性の高い構造に仕上げられている。軽自動車のオープンカーと聞いて、「危ないクルマ」と眉を潜める人も少なくないだろうが、現代の軽自動車の衝突安全基準をクリアするために相応の補強がなされている。

このことは、コーナリング時の安定した姿勢と安心感にもつながる。スポーツカーだからといっても、足がむやみに固められているわけではなく、ボディそのものの剛性でガッチリ受け止めて、足はむしろよく動かしておいて、コーナリング時にはよく粘ってくれる設定である。スポーツ走行だけではなく、普段の通勤で走らせてもその気になれそうなのがいい。

スポーツ・モードがやる気にさせる

パドルシフトが付いてシーケンシャルで変速できる7速CVTでは、標準的には街乗り時の燃費を重視したエンジン制御とシフトプログラムが採用されていることもあって、ノーマルのままでは単なる軽のオープンカーに過ぎない。もちろん、それでも十分に楽しくて、中央の幌を丸めてフロントにあるスペースに仕舞いこむと、頭上空間が無限大に開放される。

正直なところ、急な雨が降ったときなど、電動の方が便利だなあと思う。けれども、スポーティネスを重視するがゆえに、頭上に重い電動ルーフを載せるよりは、軽く手軽な幌に割り切る選択をしたという。もっとも、雨以外なら積極的にオープンエアを楽しむ準備は万全で、リアのセンターウインドーは電動で上げ下げできるし、エアコンのモードには腰から下を暖める機能も備えるなど、寒さ対策は充実している。

いよいよ、2周めからスポーツ・モードに切り替える。メーターパネルとセンターディスプレイが赤に染まり、見た目でもやる気にさせる。最終コーナーからの立ち上がりて全開にアクセルペダルを踏み込んで、メインストレートで120km/h以上まで速度を高める。第一コーナーの手前で、ブレーキを踏んでスピードを落としつつ、パドルシフトをひいてシフトダウンをして第一コーナーの侵入に備える。

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