ホンダ「S660」は、いったい何がスゴいのか 26歳の責任者が開発した新世代スポーツカー
パドルシフトのボタンが小さいのは難ありだが、カチッとしたフィールは合格点をあげていいだろう。Nシリーズからベースを流用するエンジンは前後に短いぶん、上下が高いために重心も少々高めだが、ボディ全体が軽量な上にホイールベースが短くて、鼻先がすっと入る素性の良さを見せてくれる。さらに、第三コーナーから第四コーナーにつながるところで奥まって行くにしたがって曲線が厳しくなるようなシーンでは、リアサスペンションがぐっと踏ん張ってくれる。
コーナーの出口でグリップを取り戻したら、アクセルを踏み込む。次の瞬時にエンジンから力がわき出して、ガツンと加速してくれる。といっても、最高出力は軽自動車の自主規制値である64ps(馬力)/6000rpm(回転/分)に抑えられているのだが、袖ヶ浦のような短いサーキットでは特に応答性の高いターボによる初期の立ち上がりの良さが楽しさの決め手になる。
コントロールしやすいスポーツカー
コースの内側は緩い下り坂になっていて、アクセルを踏んでいける距離は短いものの、メインストレート並みの速度に達する。かなり安定したシャシーだが、複合コーナーということもあって、限界に近いところを試せる。ミッドシップゆえに限界領域でコントロールしにくくなるのではないかと想像していたが、リアが付いてくる印象で、思いの外、安定感がある。
加えて、「アジャイルハンドリングアシスト(=AHA)」なる機能の助けもあって、回頭性がより高められている。前輪の内側にブレーキをかけてコーナリングしやすくする機能で、ホンダの旗艦モデルである「レジェンド」にも搭載されているアレだ。
筆者が子どもの頃、「ミッドシップのスポーツカーは重量物であるエンジンがボディの中心近くにあるので運動性能がいい」とスーパーカー辞典に書かれていたのを記憶している。ミッドシップのスポーツカーは子どもたちの憧れの的だった。
けれども、実際に当時のミッドシップのスポーツカーに乗ってみると、ボディの剛性が低かったために足回りをむやみに固めないとコントロールしにくかった。また、限界が近づいてくると、アクセル操作や操舵を細やかにしてやらないと、コントロールを失ってクルン!と回ってしまう。一方、「S660」は小柄ながらボディでしっかり受け止めるので、ミドシップでよく言われる”ピーキーな挙動”にはならない。
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