ホンダ「S660」は、いったい何がスゴいのか 26歳の責任者が開発した新世代スポーツカー
実際、名参謀の役割を担ったアシスタントプロジェクトリーダーの瀬田昌也さんは50代で、衝突安全プロジェクトリーダーとしてボディ設計をまとめた坂元玲氏も”バリキャリ”の40代である。面白いことに、彼らのいずれもが自他共認めるクルマ好きで、年下のLPLの元で働くこと云々を気にするそぶりはなく、むしろ「ホンダがスポーツカーを作る」ことを満喫しているように見える。
そのアイデアを発案したのが椋本氏というだけで、いわゆる組織における上下関係はあまり感じられない。思い切った人事ではあるが、ホンダ本来の風通しのよい企業文化が再構築できて、スポーツカーに限らず、ホンダの特徴を活かした製品を生み出していければ、S660が回春の妙薬と成り得る可能性は高い。
専用ボディに専用チューンのエンジン
さて、話をS660に戻そう。若きLPLである椋本氏が目指したのは、「見て楽しいスタイリングと乗って楽しい人とクルマの一体感」であり、「手が届く価格帯で、維持もしやすく、ベテランドライバーからビギナーまで末永く愛される」ことだとという。
見た目の印象は、とにかく低くて小さい。全長3400ミリ☓全幅1480ミリ以下という日本の軽自動車枠に収めたこともあるが、椋本氏が横に立つ写真を見てもわかる通り、全高がとにかく低いのだ。
空力を意識したスタイリングであり、水平を基調にしたデザインということもあって、さらに低く地をはうように見える。ピラーから上がブラックアウトしたデザインも、車高を低く見せている要因だ。タイヤが四隅に配置されており、オーバーハングが短いのも、低く踏ん張った印象を強調している。
軽いドアを開けて室内に滑りこむ。シートは小ぶりながらも、サイドサポートが張り出したサポート感が高いものである。お尻がすっぽり入り、太ももをしっかりとめているようで、軽自動車という響きから感じる頼りなさはない。直径350ミリの小径ステアリングホイールもまた、スポーティな雰囲気の演出に一役買っている。
専用にチューンされた排気量660ccのエンジンは、ホンダ「Nシリーズ」のそれをベースに、新設計のターボチャージャーを備えることで高い応答性を手に入れたという。高回転型のバルブスプリングや、コーナリング時に発生する高いGに対応できる油圧システム、エンジンや排気系の音のチューニングまで施されている。
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