そして、中国が当てにできない。これが第6の理由だ。
アメリカ、欧州がスタグフレーションになったと同時に、中国経済が構造変化を迎えており、短期的には行き詰まる。リーマンショックからの脱出のときの1つのエンジンだった「中国エンジン」は存在しない。
それどころか、世界不況の最も大きな原因は、中国経済の構造転換、短期では済まない大停滞である。今回のアメリカ、欧州の不況を助ける外部がないどころか、外部の足かせ、いや外部の大きな負の要素があるのである。
第6の理由は、中国にとどまらない。アメリカのインフレ・利上げは、新興国・途上国の通貨防衛の利上げをもたらし、ひいては世界中の各国内経済の不況、国内リスク資産市場の暴落・停滞により、世界同時不況をもたらす。
そこへ、アメリカ中心の市場経済から半分外部、半分内部である中国経済の一時的な破綻が同時に起きて、かつ中国不動産市場のバブルも崩壊する。つまり、これ以上の世界同時の実体経済不況、リスク資産市場のバブル崩壊・低迷が同時に起きることはありえないほどの同時不況が起きるからである。これが第7の理由だ。
世界全体の不況から、世界が自律的に回復する必要がある。これは試練だ。
悪あがきからハードランディング、停滞は超長期化へ
第8の理由は、このような試練に現在の政治・社会が耐えられないということだ。堕落した政治・社会の下で試練から逃げようとすると、窮地はさらなる窮地となる。それが起きるだろう。
実際、世界的にポピュリズムが跋扈(ばっこ)している。先進国のブレグジット、トランプ現象、アベノミクスだけでなく、新興国、発展途上国、いや世界中がポピュリズムに支配されている。
このような中では、自律回復を待つことはできない。無駄な財政出動、悪あがきは、経済の問題をより深刻にかつ複雑にし、一段と抜け出せない状態へ自ら陥ることになる。ソフトランディングなど到底不可能だ。結局、ハードランディングし、そこからそう簡単に回復することもできなくなり、経済の停滞は超長期化するだろう。
第9に、このようなとき、真実を語り、真摯な社会問題の解決策を訴える学者・知識人が不在であるからだ。日本でのリフレ政策、MMT(現代貨幣理論)の跋扈は典型例だが、アメリカでも危機に真摯に向き合わず、長期停滞に対して財政出動が提言される始末だ。すでに中央銀行の目標インフレ率を2%から3~4%に引き上げて、金融政策の余地を増やそうという、ポピュリズム政策提言が正統派の大御所経済学者から出ている。
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