すなわち、利上げと利下げの影響は非対称なのだ。金融緩和による株式市場のバブルは利上げで破裂したが、いったん破裂したバブルは金利を元に戻してももう一度膨らむことはない。
破裂したバブル、財務状況、投資家センチメント(心理)は元には戻らない。バブルで膨らんだセンチメントは破裂して、バブルでない状態に戻るが、一度傷ついたセンチメントは膨らませようとしても膨らみようがない。もう穴が開いている心には、いくらチャンスだとポジショントークを吹き込んでも、膨らみようがないのだ。
このようなときに、相場を盛り上げようと仕掛けても返り討ちにあうだけで、谷がさらに深くなるだけだ。そして、それは2024年にも尾を引くことが確実になる。この第4の理由が、市場関係者の下心による自業自得相場をもたらすことになるだろう。
従来のスタグフレーション以上に解決困難な不況が来る
第5に、2023年の実体経済はただの不況にとどまらない。いわゆるスタグフレーション(不況下のインフレーション)になることは確実だが、このスタグフレーションは21世紀初めての脱出不能な不況になるからだ。
1970年代のスタグフレーション以上に解決が困難な不況になる。理由は以下の2つだ。
まず、もはや外部からの救済手段がないことがある。財政、金融政策は出し尽くしている。インフレ対応で金融は引き締めせざるをえないが、財政のほうも膨張していて、これ以上の大規模な財政出動はできない。
1990年以降、金融バブルが繰り返されてきたが、それらはすべて政府の救済で延命され、別のバブルを作ることでバブル崩壊処理を先送りしてきた。これが量的緩和バブル、コロナ対応への財政出動バブルとなり、もはや救済手段は使い尽くした。
量的緩和バブルの敗戦処理で、金融はむしろ引き締めせざるをえず、財政出動の余地はない。だからこの不況は、政府による救済はできない。21世紀においては、初めて不況から経済が自律的に回復することを迫られているのである。
次に、そのときに経済には成長(量的拡大)の余地がない。1970年代は高成長時代こそ終わったが、国内経済にも低成長とはいえ、拡大の余地は残っていた。さらに、新興国が存在した。日本だけでなく、社会主義国から市場経済への移行、東アジア・東南アジア・中南米・アフリカの成長があった。
しかし、金融市場資本主義経済は世界を覆い尽くした。もはやフロンティアは存在しない。
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