「防衛費だけでない」2023年度予算案のポイント 歳出総額が過去最高の膨張、税収増加も後押し

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そして、もう1つの懸念は利払費である。2023年度予算案の利払費は、2022年度当初予算と比べて2251億円増える。これは、国債金利がほぼゼロといいながら、塵も積もれば山となり、残高が増えるだけ利払費も増える可能性を示唆している。

日銀政策修正ですぐに利払費増とはならないが…

日銀が12月20日に決定した長短金利操作(YCC)の運用見直しで、10年物国債利回りの許容上限を0.25%から0.5%に引き上げた。これにより、直ちに一般会計の利払費が増大するわけではないが、中長期的には利払費の増加要因となる。

そもそも、決算段階でみても7兆円を超える利払費を国の一般会計で支出している。これは、増やした2023年度の防衛費(防衛力強化資金への繰り入れを除く)よりも多い。それだけ、国民が納めた税金が利払費に食われて政策的経費に回せないのだ。

確かに、この利払費は、国債保有者にとっては収益源にはなる。しかし、銀行預金などを通じて間接的に国債を保有している国民にしか、その収益は得られない。金融資産を持たない国民は、ただそのコストを税金の形で払わされるだけである。

国債の発行がほぼコストなしにできるという認識は早急に改め、いかに国債への依存を減らして財政政策を運営できるかを、もっと真剣に考えるときである。

土居 丈朗 慶應義塾大学 経済学部教授

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どい・たけろう / Takero Doi

1970年生。大阪大学卒業、東京大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。東京大学社会科学研究所助手、慶應義塾大学助教授等を経て、2009年4月から現職。行政改革推進会議議員、税制調査会委員、財政制度等審議会委員、国税審議会委員、東京都税制調査会委員等を務める。主著に『地方債改革の経済学』(日本経済新聞出版社。日経・経済図書文化賞、サントリー学芸賞受賞)、『入門財政学』(日本評論社)、『入門公共経済学(第2版)』(日本評論社)等。

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