歳出に目を移すと、やはり防衛費の増加が目立つ。防衛費(防衛力強化資金への繰り入れを除く)は、6兆7880億円と、2022年度当初予算より1兆4192億円増える。
2023年度予算案の歳出総額は、2022年度当初予算と比べて、防衛力強化資金への繰り入れを除くと3兆4042億円ほど増えるが、その4割強を占めるのが防衛費ということだ。それだけ、防衛費増加のインパクトは大きい。
例年ならば、政策的経費で最大費目である社会保障費がどれだけ増加するかに注目が集まるが、社会保障費の増加は6154億円で、そのうち年金給付のための支出増が物価スライドなどにより2200億円程度を占めている。
2023年度の社会保障費では大きな改革事項はなかったから、比較的静かな決着といえよう。ただ、翌2024年度予算で診療報酬・介護報酬の同時改定を控えており、山場は1年後に迎えることになる。
巨額予備費が常態化、補正予算はもはや不要だ
ただ、予算編成上の課題も多く残されている。巨額の予備費は、2023年度予算案でも計上されている。新型コロナウイルス感染症及び原油価格・物価高騰対策予備費が4兆円、ウクライナ情勢経済緊急対応予備費が1兆円、計5兆円である。
コロナ前の補正予算の規模が3兆円だったことを踏まえると、当初予算から補正予算が上乗せされたような規模である。使途について議決を経ない巨額の予備費を常態化させれば、財政民主主義を形骸化させかねない。
この予備費があるのなら、2023年度はもはや巨額の補正予算は不要だといえるだろう。おまけに、過去には補正予算の財源になった決算剰余金を、今後は防衛費増加の財源に充てるつもりなのだから、補正予算はまともに組めない。これを機に、巨額の補正予算を断ち、日本経済の財政依存からの脱却を目指すべきである。
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