「防衛費だけでない」2023年度予算案のポイント 歳出総額が過去最高の膨張、税収増加も後押し

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その防衛力強化資金に繰り入れるとともに2023年度の防衛費に充てるために、特別会計の剰余金や独立行政法人の積立金、国有財産の売却収入などをかき集めて4兆5919億円の収入を得る(ただし、ほかの税外収入が減ることから、税外収入としては全体で3兆8828億円の増加となる)。この収入増も、歳入増に貢献した。

日銀納付金は防衛力強化資金の財源にしない

ちなみに、量的緩和政策をめぐり注目を集める日本銀行の財務状況に関連して、日銀納付金は税外収入として9464億円計上されているが、これは防衛力強化資金の財源にはしないこととしている。

防衛費のためにかき集めてきた財源のうち、1兆2113億円を2023年度の防衛費に使い、残りの3兆3806億円は防衛力強化資金に貯めておき、次年度以降の防衛費に充てる予定である。防衛力強化資金に回す支出は、例年の予算にはなく、それも歳出の増加要因として加わっている。

歳入面でのもう1つの注目点は、国債の新規発行額である。2023年度予算案では35兆6230億円と、2022年度当初予算より1兆3030億円ほど減った。この国債発行額が歳出総額に占める割合である公債依存度は、31.1%となり、3分の1を下回るところまで低下し、ようやくコロナ前の水準に戻ってきた。

コロナ禍が直撃した2020年度決算では、公債依存度が73.5%という異常な水準に達していた。2023年度は依然として高い水準ではあるものの、平時に戻る兆しが見え始めた。

ただ、前述のように税収が約4.2兆円増えているのに、公債発行額は約1.3兆円しか減っていない。それだけ、税収増を公債発行の抑制よりも歳出増に充てていることがわかる。財政健全化に向けてはまだまだ道半ばである。

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