東京駅の展覧会「鉄道と美術の150年」の要注目点 館長が教える見所、絵画の説明文も見逃せない

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実は、東京ステーションギャラリーの展示は必ずしも鉄道を軸足にはしていないそうだ。駅を移動する人たちに文化の香りを感じてほしいという創設の理念を大切にしながらも、鉄道を扱うことは稀で、2012年のリニューアルオープン記念展「始発電車を待ちながら」、2014年の東京駅開業100周年に開催された「東京駅100年の記憶」、そして今回の「鉄道と美術の150年」の3回だけだという。

東京ステーションギャラリーの冨田館長(筆者撮影)

とはいっても、東京ステーションギャラリーは東京駅の改札を出て5秒の場所にある。地理的には鉄道との関連性は随一の美術館だ。鉄道150周年という節目の年には、ぜひとも記念になる展覧会がしたい。

普段の展覧会はひとりの担当者を中心に作っていく。だが今回のテーマは壮大だ……。

そこで冨田館長は決めた。「鉄道開業150周年の企画は、学芸員も広報も総務もみんなでやろう。美術館員全員で総力戦にしよう!と、最初からみんなを巻き込んだんです」。

東京ステーションギャラリー総力戦となったプロジェクトが立ち上がったのが5年前。まずは全員で鉄道が描かれた絵をひたすら集めた。

各自が展覧会を観に行き、美術館の目録を調べ、コツコツとファイリングをしていく。そして3年間でたまった膨大な「鉄道が描かれた美術品」を並べた。

「……意外につまらないね」が全員の感想だった。このままでは「ああ、鉄道をモチーフにした作品を集めたんだね」で終わってしまう。わたしたちのやりたいことは、こういうことではない。

鉄道も美術も1872年に生まれた

その頃から月に1回ミーティングをするようになった。

ミーティングの中で出た「鉄道と美術、鉄道とアーティストの関わりという視点から作品を選んでみないか」そんな一言から、館員たちは一見、鉄道とは何の関係がなさそうでも、その裏では深い関わりがある作品を面白がって探すようになった。

そうして集まった作品を並べてみると、今度はそこから時代背景、政治、人々の営み、それぞれの作品のエピソードが際立ち始めた。結果、鉄道史や美術史を超えて、社会史や風俗史の視点が重なり合うようになってきた。

もうひとつのターニングポイントがあった。

鉄道が開業した年と、美術という言葉が生まれた年が同じ1872年(明治5年)ということに冨田館長が気づいた瞬間である。

どちらの事実も知っていた。美術史家として著名な北澤憲昭氏が著書の中で「美術」は1872年に官製訳語として造られた言葉であると明記している。もちろん鉄道は開業して150年ということも有名な事実だ。ただこのふたつが冨田館長の中で結びついていなかった。

ある日、明治初期の美術の動向をより深く確認しようと、さまざまな文献を読み直していたら気がついた。「あれ、同じ年じゃないか!」。

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