「クリーンエネルギー」に途上国が違和感覚える訳 先進国と大きく異なる「エネルギー転換」の意味

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ナレンドラ・モディが2014年、首相に就任した。新政権はインドの足かせになっている一連のエネルギー問題に立ち向かわなくてはならなかった。モディ政権はエネルギーを経済成長の一番の柱と位置付け、2015年、エネルギー改革に勢いをつけるべく、ニューデリーで全国エネルギーサミット「ウルジャ・サンガム」を開催した。

この会議でモディは、エネルギーの普及から効率、持続可能性、安全保障、新たに言われるようになったエネルギー正義まで、エネルギー開発の一連の方針を発表した。「制度的な仕組み」をもっと機動的で柔軟性に富み、市場のソリューションに開かれたものに変えていくということをモディは話した。

方針の実行は容易ではなかった。それは、複雑で、煩わしくて、重複し、しかも古びているものが多い規制の体系を採用しているからにほかならない。

そのため、いつまでに何をするという「タイムライン」はほとんど意味がないと思われた。「パーミット・ラージ」(許認可権限を持つ官僚による支配)がいまだに幅を利かせており、需給とは関係なく、政府の手で価格が管理されていた。その結果が、不十分な供給によるエネルギー不足だった。

「利用可能なエネルギー源をすべて組み合わせる」

モディは「ウルジャ・サンガム」のあと、政府機関と民間部門の両方の専門家を集めて、インドの行き詰まったエネルギー事情を打開するための方策を話し合った。

ある出席者からは、エネルギーの「市場」が不安定過ぎる、価格操作を受けやすい、信用できない、政府が今後も市場を統制し、管理し続けるべきだという意見が出た。

また別の出席者からは、時代は変わった、インドが成長と貧困削減の目標を達成するには、大胆な改革と、市場や世界への開放が欠かせないという意見が出た。ひととおり意見が出尽くすと、モディはノートから顔を上げて、短く言った。「我々には新しい考えが必要だ」と。

この「新しい考え」というのが、すべての分野でインドのエネルギー転換の基調をなしている。

「我々のエネルギー需要は莫大かつ旺盛です」と、インドの石油・天然ガス兼鉄鋼大臣ダルメンドラ・プラダンは言う。「インドは独自のエネルギー転換の道を進みます。我々の置かれた状況では、利用可能なエネルギー源をすべて組み合わせるというのが、唯一の進みうる道です」。

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