「クリーンエネルギー」に途上国が違和感覚える訳 先進国と大きく異なる「エネルギー転換」の意味

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インド──世界人口の約20%を占め、世界一人口の多い国になる日も近い──は、途上国の課題の見本と言える。インドの事例を見れば、途上国と先進国で「エネルギー転換」の意味がいかに違うかがよくわかる。

およそ3億人が1日1.25ドル相当の生活を送るような国では、貧困と経済成長はエネルギーと切り離せないからだ。インドが直面するエネルギー問題には、多くの途上国のエネルギー問題が、大規模な形で映し出されている。

「エネルギー転換」はインドではさまざまな側面を持つ。1つには、それは欠乏や薪と廃棄物の利用から商業エネルギーへの転換、ひいては衛生状態や汚染の改善を意味する。そのことは都市部(世界で最も汚染がひどい都市上位10都市のうち、7都市がインドにある)にも、有害な煙を出す伝統的な薪オーブン「チュルハ」が家庭で使われている農村部にも当てはまる。

また、何億という人を貧困から救済するために必要な経済成長率を実現することも意味する。インド政府の経済白書で述べられているとおり、「いかなる経済においても、エネルギーが発展の要になる」からだ。

インドが直面するエネルギー問題

インドがどういう発展を遂げるかは、世界に大きな影響を与えるだろう。インド経済が成長し、世界経済との結び付きを深めるにつれ、世界におけるインドの重要性は経済面でも、政治面でも増すだろう。

インドは長年、近代的なエネルギーの不足という問題を抱えている。人口の半分以上の人が燃料に使っているのは、いまだに薪や、農作物の廃棄物や、動物の排泄物など、いわゆる「バイオマス」と呼ばれる非商業エネルギーだ。商業エネルギーに関しては、総エネルギーの半分以上、電力のおよそ75%を石炭に頼っている。石油は国内のエネルギーの約30%をまかなう。

しかし、石油の85%が輸入で占められており、そのことがエネルギー安全保障上の不安を高め、原油価格の高騰でたちまち危機的状況に陥ってしまう国際収支の脆弱さを生み出している。天然ガスの比率は総エネルギーの6%で、世界平均の約25%よりだいぶ低い。近代的な再生可能エネルギーの比率はわずか3%、原子力の比率はたった1%だ。

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