2023年初プーチンの「起死回生」大反攻が始まるか 「勝利なし」で追い込まれた大統領のあがき

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そうなれば、ロシア本土からウクライナ・ドンバス地方(ルハンシク、ドネツク両州)を通って、クリミアやヘルソンに至る陸上輸送路を寸断できる。加えて、クリミア大橋を経由するロシアからの補給路も完全に絶たれることになる。この結果、クリミア半島は補給面で袋の中のネズミ状態に陥る。

そして、クリミア半島のロシア系住民がパニックになる可能性もある。すでにクリミア併合後にロシア本土から移住してきたロシア系住民の間では、ロシア本土への避難計画も作成されているといわれる。

G7議長国日本の役割は

メリトポリをめぐっては、ロシア軍に奇妙な動きがある。クレムリンは、バフムト攻撃には応援部隊を派遣したのに、メリトポリ方面には増派をした形跡がないことだ。このためバフムトと比べ、メリトポリ防衛部隊はそれほど強力とはみえない。軍事筋は「バフムトに精鋭部隊を送ったロシア軍はメリトポリを守ることはできない。ウクライナ軍は開始から間もなくメリトポリ奪還作戦を終える可能性すらある」と強気の見方を示している。

ウクライナ軍によるクリミア半島の奪還をめぐって筆者は最近「本当にウクライナ軍は軍事的に最後まで武力で解放するつもりなのか」とよく聞かれる。その答えはいつもこうだ。「クリミアを戦闘だけで全部制圧する必要はないのではないか。戦闘でロシア軍を追い込めば、その後は強い立場で交渉に臨み、半島すべてを奪還することも可能だろう」と。ウクライナもそういう戦略も想定しているのではないか、と考える。

最後に、2023年は日本が先進7カ国(G7)の議長国として、G7の対ウクライナ支援で中心的役割を果たすことが求められる。侵略国ロシアが安保理常任理事国であるため機能不全になっている国連安保理に代わり、G7の指導力の重要性が増している。2023年早々にも岸田文雄首相か林芳正外相がキーウ入りして、日本の決意や方針を明確にウクライナや国際社会に向け表明することを期待している。

吉田 成之 新聞通信調査会理事、共同通信ロシア・東欧ファイル編集長

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よしだ しげゆき / Shigeyuki Yoshida

1953年、東京生まれ。東京外国語大学ロシア語学科卒。1986年から1年間、サンクトペテルブルク大学に留学。1988~92年まで共同通信モスクワ支局。その後ワシントン支局を経て、1998年から2002年までモスクワ支局長。外信部長、共同通信常務理事などを経て現職。最初のモスクワ勤務でソ連崩壊に立ち会う。ワシントンでは米朝の核交渉を取材。2回目のモスクワではプーチン大統領誕生を取材。この間、「ソ連が計画経済制度を停止」「戦略核削減交渉(START)で米ソが基本合意」「ソ連が大統領制導入へ」「米が弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約からの脱退方針をロシアに表明」などの国際的スクープを書いた。

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