2023年初プーチンの「起死回生」大反攻が始まるか 「勝利なし」で追い込まれた大統領のあがき

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2014年の第1次ウクライナ侵攻でクリミアを併合したことも回答のトップ3に挙げられ、プーチン氏にとって最大の政治的業績だ。このまま引き下がるわけにはいかないのだ。国内で厭戦気分が徐々に広がる中、プーチン氏は勝利で戦争への支持を再び高めることを狙っているのだろう。

バフムト攻防戦は開始からすでに5カ月が過ぎているが、2022年11月変化が起きた。プーチン氏が年内奪還を軍に厳命したとされ、現時点でのロシア軍包囲部隊の正確な兵力は不明だが、市周辺部に猛攻を掛けてきている。ウクライナの軍事専門家タラス・ベレゾベツ氏は、多くの自軍兵士の死体の間から突撃してくるロシア部隊の行動を、旧日本軍のようだとして「トウキョウ・エクスプレス」と呼んでいる。

傭兵部隊の暗躍

もともとバフムト攻防戦のロシア側の中心部隊は、「プーチンの料理人」と呼ばれる富豪プリゴジン氏が率いる民間軍事会社ワグネルの傭兵部隊だ。ワグネル社部隊は侵攻以来、失敗続きの国防省正規軍を尻目に一定の成果を出している。これを背景にプリゴジン氏は、政権内でプーチン氏の軍事問題での補佐官的な地位まで上り詰めている。プリゴジン氏にしてみれば、ワグネル部隊が奪還を実現することでさらに自らの地位をさらに高めたいという思惑があるのだろう。

ウクライナの軍事筋によると、プーチン氏はプリゴジン氏に対し、地上部隊しかないワグネル部隊がライバル関係にある正規軍と協力せよと合同部隊方式を厳命した。この結果、航空機の支援も始まった。これをウクライナの軍事筋は「過小評価できない」と警戒している。しかし、この合同部隊には弱点があるようだ。表向きワグネル部隊は正規軍と協力しているものの、実際には調整がうまくいっていないという。

こうしたロシア軍の必死なバフムト攻略作戦に対し、ウクライナ側の作戦方針も当初より大きく変化した。もともとウクライナ軍部は、侵攻開始時人口約7万だったバフムトの戦略的重要性を高くみていなかった。仮にロシア軍に奪還されても、他の戦線に影響はないと幹部は公言していた。

しかし最近、ゼレンスキー大統領は奪取を許せば、反攻開始後の最初の敗北になるとして死守を命じた。米欧の世論が戦況の影響を受けることを理解している大統領としては、ここで敗北を喫すれば、強力に軍事支援を続けている米欧に揺らぎが生じることを恐れているとみられる。

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