日本悩ます「エンドレスな円安」にはならない根拠 2023年も円安・物価高は続いてしまうのか

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FRBのパウエル議長は決定後に「物価の安定なくして、経済は誰のためにも機能しない。仕事を成し遂げたと確信するまで続けるだろう」と語った。言葉を読む限り、さらなる利上げの可能性がある。

アメリカの利上げが続けば、日本には外国為替の問題が出てくる。アメリカが通貨量を減らして利上げを続ける一方で、日本はそのまま量的緩和を継続していくとどうなるか。端的に言って、円をドルに換える人が激増する。

資産を日本円で持っていても金利がつかないが、米ドルに変えれば3%つくとなると、円を売ってドルで運用したほうが儲かると考えるのは当然である。2022年に始まった円安の動きはしばらく続くだろう。

「エンドレスな円安」はない

これまで日本円は「安全資産」と言われていた。ところが今回はリスク投資の動きが弱い。なぜかというと、企業の倒産防止のために大規模な量的緩和をさらに進めたからにほかならない。それが2022年9月の1ドル140円台への下落の原因だろう。実に1998年8月以来24年ぶりの水準である。

FRBが政策金利を0・75%アップした9月21日、大方の予想通り日銀は金融政策決定会合で大規模な金融緩和策を維持する方針を決定した。

日本でもインフレ圧力の高まりはあるものの、景気の下支えのために量的緩和策が必要という判断だ。日銀の発表後、円が売られドル円相場は一時1ドル145円台まで下落した。日銀もそれは折り込み済みだったろう。

日銀の介入も効果を発揮せず、10月20日には1ドル150円台にまで値下がりし、1990年8月以来32年ぶりの円安水準となった。だが仮に世界的な恐慌となり、アメリカで利上げが止まる、あるいは利下げが始まるようなことがあれば、日本円は再び安全資産として信用を取り戻すだろう。

とくにこれからはユーロがどうなるのか不透明な状況である。リスクを避ける機関投資家が円に回帰する可能性は考えないといけない。

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