歳をとっても老けない人が50代で「やらないこと」 歳をとってからの「苦労」は買ってでもするもの

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その失敗を恐れず、自分の好奇心のままに思い切って行動してこその実験的精神です。そんな実験的精神こそが前頭葉を刺激し、働かせるのです。さらに「失敗」は、予測できるものもなかにはありますが、「想定外」の失敗であればあるほど、前頭葉には大歓迎です。

想定外の事態に直面して、「さあ、どうするか」と考えることで一層、前頭葉がフル稼働します。積極的に「未知の失敗が織り込み済み」の実験に挑戦し続けることが、脳の若さを維持する秘訣といえます。

歳をとっても苦労は買ってでもすべき

多くの人は、記憶力が低下することで初めて「ああ、私もいよいよ老化が始まったか」と思うのですが、ここがまず、勘違いの始まりです。

記憶力、つまり記憶のインプットとその蓄積に関係するのは、脳の側頭葉ですが、この側頭葉は、前頭葉と比較すると老化が始まるのが遅いという特徴があります。

記憶力が低下し始めるとっくの前に前頭葉の老化が始まっているというわけです。

また、「若い頃は視野が狭くても、歳をとって経験を積むほど多彩なものの見方ができるようになる」と一般的には考えられがちですが、これも大いなる勘違いです。

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歳をとり始め、「まだ側頭葉は健在だが、前頭葉は老化している」ときに特に目立つのが「以前はこうだったのだから、とりあえず、同じようにしておけば問題はない」という、いわゆる「前例踏襲型思考」です。

これは前頭葉の「未来型思考」ができなくなってしまっているゆえに陥る思考法ですが、このように歳をとると、「多彩なものの見方」どころか、過去の事例からしかものごとを考えられない、創造性も多様性もない考え方をしてしまいがちなのです。

さらに、歳をとると、仕事上のミス、失敗もあまりしなくなるものですが、それを「亀の甲より年の功、流れの先が読めるようになったからだ」と思うのも勘違いの可能性があります。単に失敗することをしなくなっただけにすぎない、ということもあるのです。

そして何より、こうした「勘違い」を起こしてしまうのも、ひとえに前頭葉が老化しているからにほかなりません。

脳が老化してくると、「自分に心地よい」ことを好むようになります。それゆえ、自分の都合のよいようにものごとを解釈し、そして「自ら無理や苦労をすることを避ける、しなくなる」からです。

しかし――人生100年時代。40代、50代といってもある意味「まだまだ」なのです。こんなところで老け込んでいるわけにはいきません。いくつになっても、失敗を恐れず、どんな困難にも立ち向かっていくことです。

「若い頃の苦労は買ってでもするもの」といいますが、むしろ脳の老化防止のためにも、「歳をとってからの苦労は買ってでもするもの」なのです。

和田 秀樹 精神科医

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わだ ひでき / Hideki Wada

1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェロー、浴風会病院精神科医師を経て、現在は和田秀樹こころと体のクリニック院長。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わる。『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『80歳の壁』(幻冬舎新書)、『60歳からはやりたい放題』(扶桑社新書)、『老いたら好きに生きる』(毎日新聞出版)など著書多数。

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