新たな雄パンダ来日？和歌山の3頭が2月に中国へ 永明は1994年に来日､以後白浜で暮らしていた

永明のように中国で生まれたパンダが中国へ戻るケースは、まだ少ない。シンポジウムで張博士が話した「アメリカの高齢パンダは帰国しています」というのは、数少ないその一例だ。

アメリカ・サンディエゴ動物園の雄のガオガオ（高高）は2018年に四川省へ旅立った。さらに2019年5月には、ガオガオのパートナーで1996年9月からサンディエゴで暮らしていたバイユン（白雲）も息子と一緒に四川省へ渡った。

ちなみにバイユンは、神戸市立王子動物園で暮らすタンタン（旦旦）の姉。タンタンも高齢になり、高齢パンダ向けに設備の整った施設で余生を過ごすほうが良いとの中国側の判断から、2020年7月を期限に中国へ戻ることになった。だがコロナ禍で延期を重ねている。

現在（2022年12月15日時点）は、半月後に迫る2022年12月末が期限だが、タンタンは心臓の病気で公開をお休み中（参照：『｢パンダの心臓疾患は珍しい｣神戸の旦旦を襲う病』）。期限までに中国へ行くのは難しいだろう。

高齢のパンダが中国へ行く例は今後、増える見通しだ。アメリカのワシントンD.C.にあるスミソニアン国立動物園は、中国から来た2頭のパンダを2023年12月に中国へ戻す予定。同園で2020年8月に生まれた息子も一緒に中国へ行く。イギリスのエディンバラ動物園も、中国から来た2頭のパンダを早ければ2023年10月に中国へ返還する計画だ。

桜浜・桃浜の渡航も繁殖が理由

一方、中国国外で生まれたパンダが繁殖のために中国へ行くことは、もはや珍しくない。スペインやオーストリア、アメリカ、マレーシアで生まれたパンダも中国へ渡った。上野動物園のシャンシャンの中国行きも繁殖が目的だ（参照：『シャンシャン中国に送るエキスパート集団の正体』）。

桜浜・桃浜の渡航も繁殖が理由とされている。雌のパンダが繁殖できるようになる年齢は一般的に4～5歳なので、8歳の桜浜・桃浜は、ゆうに超えている。今後、中国でパートナーを探して繁殖を目指すという。アドベンチャーワールドからパンダが中国へ行くのは、3頭（桜浜・桃浜の兄1頭と姉2頭）が渡航した2017年6月以来だ。

アドベンチャーワールドの永明、桜浜、桃浜が行く予定の成都ジャイアントパンダ繁育研究基地。2019年11月14日（筆者撮影）

永明、桜浜、桃浜の3頭の行き先は、成都ジャイアントパンダ繁育研究基地。現在は200頭ほどのパンダを飼育している。園内には日本語の表示もある。筆者は2007年以来、何度か行ったことがあり、毎回、日本人観光客を見かけた。