中国主導で設立、「インフラ投資銀行」の磁力 日米が距離置くも欧州諸国は続々と参加

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貿易黒字の拡大に伴い、中国の外貨準備高は4兆㌦に迫る世界最大の規模を誇るようになった。しかし、国内ではその運用利回りの低さが問題視されており、インフラ開発への投資による収益向上が期待されている。同時に、途上国に設備を売る際に人民元で決済することや、ローンを人民元建てにすることで人民元の国際化を進める狙いもある。

「AIIBの構想は、4年以上前から検討されていた」と中国政府系シンクタンクの関係者は明かす。当時はまだ胡錦濤政権の時代だ。だが、当時は鄧小平時代から引き継がれてきた「韜光養晦」(目立つことをせず、力を蓄える)という外交思想が強かった。前政権は、西側への挑戦ととられかねない試みには慎重だったが、「大国」としての自信をつけた習政権は一歩を踏み出した。

日本が迎えた難局

そればかりでなく、南シナ海での領有権問題を抱えるベトナムやフィリピンなど、周辺諸国との摩擦の高まりを沈静化させる狙いもある。習主席がAIIB構想を打ち上げた2013年10月は、周辺諸国との外交立て直しを目指した「周辺外交工作会議」が開かれた時期でもある。今回のAIIB構想にはフィリピン、ベトナムを含むASEAN(東南アジア諸国連合)加盟国すべてが参加しており、中国は政治面でも手応えを感じていることだろう。

中国経済専門家の有志とともにインフラ投資銀行への参加を日本政府に呼びかけている現代中国研究家の津上俊哉氏は、「AIIBをめぐる中国国内での議論が自国の利益ばかりを強調しているのは確かに気がかり。だが、参加したうえで問題は中から変えていくというスタンスのほうが日本にとって得策だ」と話す。中国と比べて資金力が見劣りする日本が、この”ゲーム”にどう関与していくか、難しい局面を迎えている。

西村 豪太 東洋経済 コラムニスト

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にしむら ごうた / Gota Nishimura

1992年に東洋経済新報社入社。2016年10月から2018年末まで、また2020年10月から2022年3月の二度にわたり『週刊東洋経済』編集長。現在は同社コラムニスト。2004年から2005年まで北京で中国社会科学院日本研究所客員研究員。著書に『米中経済戦争』(東洋経済新報社)。

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