地域医療構想を策定する際に、まず肝となるのが、2025年の医療需要を二次医療圏ごとに推計することである。今般の策定では、各患者の診療ごとのレセプト(診療報酬明細書)というビッグデータを活用し、医療の実態に即して推計する。そこから、医療機能別の病床(ベッド)の必要量を見極める。ここでいう医療機能とは、若年者に多い急性期患者や、高齢者に多い慢性期患者といった、病状に応じて分類したものである。
「4分類」で患者数を推計する「地域医療構想」
この分類を概説すれば、高度な手術が必要な状態である高度急性期、病状の早期安定化に向けて医療を提供する急性期、リハビリや退院準備を進める回復期と、慢性期の4つの機能である。同じ患者が同じ病院に入院するにしても、入院初日が高度急性期、2~4日目が急性期、5~7日目が回復期、そして8日目に退院、などと病状によって変わりうる形で推計する。地域医療構想では、この機能ごとに患者数を推計することとなっている。
この推計方法については、昨年から専門的な検討と議論が積み重ねられてきた。その検討と議論の舞台となったのは、内閣官房・社会保障制度改革推進本部の医療・介護情報の活用による改革の推進に関する専門調査会と、厚生労働省医政局の地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会だった。筆者は、この両会議の委員を仰せつかり、検討と議論を重ねてきた。
3月17日に、内閣官房の医療・介護情報の活用による改革の推進に関する専門調査会が開催され、前述した医療需要の推計方法について了承し、翌18日に開催された厚生労働省医政局の地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会で、地域医療構想を各都道府県で策定できるように定めるガイドラインを了承した。こうして、2015年度以降に各都道府県が、二次医療圏ごとに2025年の医療需要を推計し、病床再編を進めることになる。
わが国の病床再編で問われるのは、医療機能ごとの医療需要(患者数)に応じた病床が、ほぼ過不足ないように調整できるか、という点である。図に示されているように、わが国の病床は、概していえば、高度急性期患者に対応する病床が過剰なのに対して、回復期患者に対応する病床が相対的に少ない、と言える。
高度急性期、急性期、回復期、慢性期という4機能は、今般の地域医療構想を想定して設けられた分類で、これまでにはそうした分類ではなく、入院患者1人に対する看護師の人数で表される「7対1」病床(高度急性期などを想起)、「15対1」病床(慢性期を想起)という形で表されてきた。入院患者に対してより多く看護師がつくということは、それだけ病状が悪く医療や看護が必要な患者ということで、当然ながらそれだけ医療資源が投じられているから単価が高い病床を意味する。
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