「脳トレ」を専門医が科学的根拠はないと言うワケ 認知症を引き起こす「脳のゴミ」を掃除しよう
たとえば、スコットランド・アバディーン王立病院のロジャー・スタッフ氏およびアバディーン大学の共同研究では、クロスワードや数独(パズルの一種)のような脳トレによる、知力低下(つまり認知機能の低下)を防ぐ効果はない、という研究データを発表しています。
また、スタンフォード大学長寿研究センターとドイツのマックス・プランク研究所人間発達研究部門から、脳トレゲームの効果は科学的根拠が不十分である、という声明が発表されたことがニュースになったこともありました。
私のクリニックを受診する患者さんのなかにも、脳トレ愛好者はたくさんいらっしゃいます。
もちろん、どんなことであっても「自分が興味をもてること」に取り組むことは決して悪いことではありません。
脳トレに取り組むことで頭がスッキリして、心が安定するのであれば、どんどんやっていいと思います。
ただし、「脳トレさえ行っていれば、記憶力の低下や認知症といった脳の衰えが防げる」と考えるのは間違いです。
ここでちょっと考えてみてください。机に座って黙々とクロスワードを解くだけで、頭がスッキリして物忘れをしなくなったり、集中力が増したり……。
そんな夢のようなことがあると思いますか?
筋肉をイメージしていただくとわかりやすいかもしれません。
ちょっと体を動かしたり、ダンベルや腹筋でトレーニングしていれば勝手に鍛えられるというのは大きな間違いです。
筋肉が成長したり、強くなるためには、その成長を助ける栄養を補給することが必要になります。
筋肉の成長に必要な栄養がしっかりとれていなければ、筋肉は成長することができず、それどころか、傷めつけられて細ってしまいます。
脳も同じです。機能を維持するためには栄養を必要とします。必要な栄養が補給されなければ、どんどん衰えてしまうのです。
認知症は「未病」の段階から対策すべき
「私、認知症じゃないでしょうか?」
私のクリニックには、このように認知症に不安を抱える方が連日来院されます。
「テレビで認知症の番組を見て心当たりがある症状があった」
「まわりの人に大丈夫?と言われた」など、来院されるきっかけはさまざまです。
そんな皆さんに私が最初にお聞きすることはいつも同じです。
「物忘れしますか?」
「時々あります」
このように答えた方は、認知症の可能性はほぼないだろうと判断します。
私が認知症を疑うのは、患者さんが「全くありません」と答えたとき。
もしかしたら、“物忘れをしていることを忘れている”可能性があるからです。
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