数々のヒット生んだ元セガ・名越稔洋の「自分軸」 「ゲームは売れなきゃ絶対的に意味がない」

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(写真:エンジニアtype編集部)

ただ、目の前の作品に「すべて」をつぎ込みたいと考える名越さんにとって、最大の壁となるのは「時間」の制約だ。

1つのタイトルにやりたいことすべてを盛り込むのが名越さんのスタイル。リリースまでの限られた時間の中でどうすれば「全部できるか」を考えることは、毎回至難の業だという。

「私のケースに限らず、会社の壁に『18時まで帰りましょう』なんて張り紙をしておきながら、定時帰りで働いていたら到底達成できないような経営目標を掲げている会社っていっぱいありますよね?

そして、その数字と時間の制約のギャップに苦しんでいるクリエーターたちもたくさんいる。でもね、もう『何時まででも働いていいよ』っていう時代じゃない。

だったら、決められた枠組みや制約の中で目的を達成するためにどうしたらいいかを考えるしかない。やりたいことをやり切るために、何を大切にし、何を譲るのか。

そこを見極めて、最善を選び取っていくことが現代のクリエーターにとって健全なものづくりのあり方なんじゃないかと思いますね」

エンジニアがゲームのアイデアや作り方を“操る”時代に

名越スタジオに所属するスタッフは、約30名(2022年11月現在)。今後も積極的に人材を増やす予定とのことだが、今のところ100名規模のスタジオにするイメージは無いそうだ。「世界を熱狂させる面白いゲームを作りたい」という思いでつながる小規模な組織だからこそ、チームの結束も固い。

「今の規模感だと、私自身が現場のメンバーと直接ディスカッションできるし、うまく意思疎通ができる。それがすごく心地いいし、さまざまなバックグラウンドを持つメンバーから学ぶことも多いです。

長く1つの会社に勤めてきたから、自分のゲームづくりが正しいと信じ込んでいた部分があったんですよ。でも、1歩会社の外に出たらそんなことはなくて。ゲームづくりのアプローチは無数にあるのだと知りました」

名越さんが目下取り組んでいるのは、メンバー全員のポテンシャルを新作ゲームづくりに生かすことだ。メンバーとのディスカッションを重ね、チームで「出し惜しみしない」ものづくりに挑んでいる。

「開発部門はもちろん、広報や総務を含む全社員に向けて、企画をプレゼンするんですよ。そして、みんなから意見をもらう。

時には私のアイデアが否定されることもあるんですけど、的を射た指摘であれば大歓迎。みんなからもらった意見を参考に、方向転換することもありますね」

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