金利を引き上げると、当座預金に対する付利の支出が増える。他方で、既発行国債の利子収入は変わらない。したがって、日銀の収支は悪化する。
どの程度の変化が生じるかは、金利がどの程度上昇し、それに応じて付利をどうするかによる。
仮に3つの階層のすべてについて金利を1%ポイント引き上げれば、日銀の収支が年間4.9(=493×0.01)兆円悪化する。
国債償還額に対応するだけ付利の支払いも減る
では、付利の増加は、どの程度の期間続くだろうか?
国債の償還期限が来ると、政府は借換債を発行する。民間の銀行がこれを購入するが、購入資金は、日銀当座預金を取り崩すことによって調達する。
これによって、日銀のバランスシートは次のように変化する。まず国債を償還したので、資産にある国債が減少する。そして、民間銀行が当座預金を取り崩したので、日銀のバランスシートで当座預金残高が、国債償還額だけ減少する。
結局のところ、国債償還額に対応するだけ、当座預金の残高が減少し、付利の支払いも減る。
つまり、金利が上がると、当座預金残高×金利上昇分だけ付利支払いが増加するが、それは当座預金に対応する国債が償還されるまで続くわけだ。したがって、付利増加額の合計は、
当座預金残高×金利上昇幅×国債の平均残存期間
ということになる。
ところで、ファイナンス理論によれば、金利が変化した場合の国債の評価額は、次の式で表される。
国債評価の下落額=国債残高×金利上昇幅×国債の平均残存期間
(正確にいうと、「平均残存期間」ではなく「デュレーション」だが、両者はほぼ同じものと考えてよい)
当座預金残高と国債残高が等しいとすれば、これら2つの式は同じものだ。
つまり、国債評価額の減少と同額だけ、当座預金の支払いが増加することになる。
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