日銀の「債務超過」がありうるという最悪シナリオ 保有国債が含み損に、金利が上がればどうなるか

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以上のことは、次のように考えても、確かめられる。 

先に述べたように、雨宮副総裁は、「長期金利が1%上昇した場合、日銀が保有する国債の評価損は28.6兆円」と答弁した。2022年9月末の長期国債保有額は546兆円だった(図表1参照)。したがって、上の公式から、平均残存期間は5.24年程度ということになる。

ここで簡単化のため、すべての保有国債が、平均残存期間で一挙に償還されるものとしよう。

すると、損失増加額の合計は、先に示した4.9兆円の5.24年分、すなわち25.7兆円になる。

先に、1%ポイントの金利上昇によって生じる評価損は、28.6兆円だと述べた。ここで示したように、国債を満期まで持ち続けても、ほぼ同額の損失増が発生するのである(完全に一致しないのは、長期国債残高と当座預金残高が同額でないため)。

日銀納付金がなくなるので、国民負担が増加

国債の評価損は、付利の支払い増に対応しているのである。両者が等しくなるのは、偶然ではない。その意味で、評価損は、現実の問題を引き起こす。

実際、日銀が債務超過に陥れば、日銀納付金はストップする。2021年度の日銀納付金は、1兆2583億円だった。

防衛費増額など歳出増加のときに、納付金が約3年間ストップすることの影響は、決して無視できない。

政府は、これを補填するための財源を探さなければならない。何が選ばれるにせよ、国民負担は増加する。

さらに、日銀への信認が揺らげば、為替レートや金利の急変動などのリスクも高まるだろう。

この問題にどう対処するかが、来年4月に発足する日銀新体制が取り組むべき喫緊の課題だ。

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野口 悠紀雄 一橋大学名誉教授

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のぐち ゆきお / Yukio Noguchi

1940年、東京に生まれる。 1963年、東京大学工学部卒業。 1964年、大蔵省入省。 1972年、エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。 一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、一橋大学名誉教授。専門は日本経済論。『中国が世界を攪乱する』(東洋経済新報社 )、『書くことについて』(角川新書)、『リープフロッグ』逆転勝ちの経済学(文春新書)など著書多数。

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