2023年の「日米の株価」はどのように動くのか 行きすぎた悲観相場の修正後に待ち受けるもの

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縮小

前述のように、インフレ率は改善はしても、すぐに大きくは低下しないので、連銀の利上げによってアメリカの短期金利は2023年前半も上がり続けそうだ。

一方で長期金利は経済などの変化を先取りするので、同国の10年国債利回りは低下していき、それがドル安を引き起こすだろう。世界的に株価が下落を強めれば、「リスク回避のための円高」が再来するかもしれないし、内外長期金利差の縮小もあって、円が対主要通貨で全面高になる可能性が高いと考える。世界的な景気悪化懸念から、国際商品市況もほぼ全面的に下落すると見込む。

下値のメドは、NY(ニューヨーク)ダウが3万ドル、それにつれて日経平均株価が2万6000円、アメリカの10年国債利回りは2.5%、ドル円相場は1ドル=125円を想定している。

ただ、日米などの2023年の株価の最安値は、2022年の安値(終値ベースで、NYダウは2万8726ドル、日経平均株価は2万4718円)に迫ったとしてもこれらを下回らない、との見通しだ。

理由は、過去の歴史的な株価暴落期(リーマンショック時など)のような、システム的な危機の芽や、バブル崩壊を生じるようなバブル形成も、とくに見当たらないためだ。また、景気悪化の要因も自明、すなわちアメリカの連銀の利上げによるものであり、景気悪化が深刻化した場合には手の打ちようがあるからだ。

2023年末にかけては、市場は好転へ

その後、来年後半は株価が底打ちし反転上昇するなど、世界市場は明転すると予想する。年前半に関しては、連銀は景気を犠牲にしても、十分な水準になるまでインフレ率を抑え込む方針を続けそうだ。その後、次第にインフレが改善し、一方で年央に向けて景気や株価が悪化し続ければ、再緩和が行われるものと考える。それが市場の方向性を変化させるきっかけになるだろう。

実体経済が持ち直すには時間がかかりそうだが、先行きに明るい見通しを抱けるようになれば、先んじて株価は上昇基調に復するだろう。再緩和で政策金利は低下していくことになっても、長期金利は同様に先取りして動くため、年末に向けて上昇方向だろう。そうした明るい株価の動きを背景に、外国為替市場ではリスクをとろうとの投資家の動きが優勢となり、ドル高(外貨高)円安に向かうと見込んでいる。

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