思考力が「ある人」「ない人」なにがどう違うのか VUCA時代では問題解決より「問題発見」が重要だ

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・具体と抽象
それではどのように考えればよいのでしょうか? 「考える」という動詞は「歩く」や「投げる」といった目に見える動作を表現する動詞とは決定的に違って、目に見えないぶん実行するのが難しいと言えます。それを少しでも再現可能にするのが大切ですが、最も基本となるのが、「具体を抽象にする」抽象化と、「抽象を具体にする」具体化の組み合わせです。

・論理思考力と直観力
ここでは思考の立体図における「上下の層」との関係を見ていきましょう。論理というのは「つながり」です。このつながり、あるいは事象間の関係性こそが抽象の1つの典型的な例であり、論理は具体的なもの同士をつなぐ抽象という関係を、端的に表現したものです。また、帰納と演繹という論理思考の柱となる概念も、それぞれ具体→抽象、抽象→具体を表現したものです。

これに対して直観力は、具体的な経験の積み重ねが大きいと言えます。具体的な経験が無意識のうちに抽象化されたものが、直観力の正体の1つの側面ということができるでしょう。

思考力の全体像や構成する要素を知ることはその第一歩

さらに「上の層」の〇〇思考力との関連を見てみましょう。図4の「論理思考力」「直観力」の分割の方向が、その上の〇〇思考力とは90度ずれていることにお気づきでしょうか?

思考力の地図 論理とひらめきを使いこなせる頭のつくり方
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この形状によって表現したいのは、仮説思考力にしてもフレームワーク思考力にしても、すべての思考力には論理的思考力と直観力の両方が必要になるということです。例えば、ビジネスの現場においてさまざまな仮説を立てる場合には、直観力が求められます。「なぜその仮説が出てきたか?」に関しては、「長年の経験から」という要素は大きいのではないかと思います。ただし、その仮説を検証する際にはさまざまなデータや分析を駆使する場面が多く、ここでは論理が重要になります。

フレームワーク思考力に関しても、MECE(モレなくダブりなく)なども含めて基本的な考え方は論理性が必要になりますが、「なぜそのフレームワークを選択するのがよいのか」に関しては、多分に経験による直観を用いる側面も大きくなってきます。

最上層の〇〇思考力に関しては、本記事で挙げている以外にもさまざまな思考力が考えられ、これらは必ずしも網羅性があるわけではありません。

思考力を養う上で、思考力の全体像や構成する要素を知ることはその第一歩と言えるでしょう。

細谷 功 ビジネスコンサルタント、著述家

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ほそや いさお / Isao Hosoya

1964年、神奈川県生まれ。東京大学工学部卒業後、東芝を経てアーンスト&ヤング・コンサルティング(クニエの前身)に入社。2009年よりクニエのマネージングディレクター、2012年より同社コンサルティングフェローとなる。問題解決や思考に関する講演やセミナーを国内外の大学や企業などに対して実施している。

著書に『地頭力を鍛える 問題解決に活かす「フェルミ推定」』、『アナロジー思考 「構造」と「関係性」を見抜く』『問題解決のジレンマ イグノランスマネジメント:無知の力』(以上、東洋経済新報社)などがある。

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