思考力が「ある人」「ない人」なにがどう違うのか VUCA時代では問題解決より「問題発見」が重要だ
簡単に表現すれば、問題発見というのは川上で、問題解決が川下という関係になります。問題解決が重要な場面とは、解決すべき問題がすでに明確なとき、例えば顧客からの安定的な発注があるとか、毎年目標が前年のスライドで決まっている(売上〇%向上とかコスト□%削減とか)というような場合で、比較的安定的な環境ではこのような狭義の問題解決の重要性が増します。
「そもそも何を依頼すればよいかわからない」顧客
これに対してVUCAの時代には、そもそもの問題は何なのか? というところから考えることが必要になる場面が増えてきます。例えば「デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する必要がある」とか「コロナ後の新しい時代に対応しなければいけない」といったような曖昧な目標のみがあるときには、「そもそも何を依頼すればよいかわからない」顧客に対して、戦略や上位目的といった比較的抽象度の高いものを対象として、問題を発見する川上側のニーズが高まってきます。
ここでの問題は、川上の問題発見と川下の問題解決では対象となる課題の性質が異なるために、必要とされる価値観やスキルがまったく異なるということです。ここを理解しないで問題解決の思考回路で問題発見に取り組もうとすると、木に竹を接つぐようなちぐはぐなことが起こります。まずは、これら川上と川下の仕事の性質の違いを図2のようにまとめておきます。
川下はある程度ルーチン化した問題も多く、不確実性が低いのに対して、川上側では不確実性、つまりリスクも高くなってきます。川上は混沌として役割分担などの境界が不明確なものが多く、扱う課題の抽象度も高くなります。また、「白紙に絵を描く」必要がある問題発見では、蓄積されたノウハウや明確な指標が存在せず、仕事も標準化されていないために高度に「個人に紐ひもづいた」属人的な仕事が多くなります(川下の問題解決はほぼこれらとは真逆と言えます)。
このような仕事の性質の違いを受けて、川上と川下で求められるスキルも図3のように異なるものになります。
先の仕事の性質の違いで述べたように、川上はリスクが高いことが多いために、すべてが確率論の世界であり、「正解が決まっている」川下側とは異なります。また「白紙に描いていく」要素が強い川上では、まだ形にないものを形にしていく抽象化能力を発揮した想像や創造という2つのソウゾウ力(りょく)が求められ、ここではまさに思考力の出番となります。
対する川下側は、過去の経験を活用して具体的な解に導いていくという点で、比較的知識力の重要性が上がっていきます。また、知的好奇心とも大きく関連する能動性に関しても、「言われてもいない問題を考える」川上では特に重要となり、「与えられた問題に取り組む」受動的姿勢が必要とされる川下側とは異なります。
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