日ハム新球場「誰も喜ばない」改修という驚く顛末 ファンにとっても迫力ある試合観戦が損なわれる

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事実、MLB30球団の本拠地球場の本塁からバックストップまでの距離は、60フィート(18.288m)未満の球場がたくさんある。ヒューストン・アストロズ(ミニッツメイドパーク14.9m)、タンパベイ・レイズ(トロピカーナフィールド15.2m)、カンザスシティ・ロイヤルズ(カウフマン・スタジアム12.7m)、サンディエゴ・パドレス(ペトコ・パーク13.7m)など、少なくとも17球団の本拠地球場が60フィート未満だ。しかしアメリカのルールブックでは「推奨する」となっているので、規則に違反しているわけではない。

むしろアメリカの野球場は、本塁や一三塁から客席までの距離を短くして、より迫力あるシーンを見せるのがトレンドになっている。今回、日本ハム側が設計を依頼したHKSは全米を代表する設計事務所の一つであり、NFLやMLBの本拠地スタジアムを設計した実績がある。HKSが設計したミルウォーキー・ブルワーズの本拠地アメリカン・ファミリーフィールドの本塁からバックストップまでの距離も17.1mと、Official Baseball Rulesの推奨値よりも短くなっている。

事実、新球場は「本塁―バックストップ間」が25mあった札幌ドームよりも距離が近いことが「売り」であることが報じられていた。11月7日に実行委員会が「公認野球規則違反」を指摘するまで、日本ハム側はまったくその認識がなかったと思われる。

日本ハム球団側が実行委員会に謝罪

しかしながら球場建設をチェックする側のNPB、実行委員会も球場の竣工4カ月前になるまで、球場の設計について「まったく知らなかった」のだとすると、極めて不自然だ。現場レベルでは話題になっても上層部に伝わっていなかったのだろうか? それともこの問題は重要ではないと看過されていたのか? 球場建設の95%が完了したこの期に及んで、プロ野球実行委員会が、公認野球規則違反を指摘するのは、奇怪なことだと言わざるをえない。

「もともとが公認野球規則の“誤訳”から始まっているのだから、大きな問題にはならないだろう。公認野球規則の『必要とする』を『望ましい』に改訂して一件落着ではないか」という観測もあったが、11月14日の実行委員会で日本ハム球団側が、実行委員会に謝罪し、時間的な問題もあって2023年はこのままで試合を行うが、来季オフから2年かけて改修する計画案を提示した。

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