キャリアに大きな転機が訪れたのは、34歳のとき。ヘアメイクアップアーティストとして多忙な日々を送るかたわら、自らの事務所ラ・ドンナを設立した。
「30代に入って、今まで自分が避けてきた“責任感のある人生”を送ってみようかなと。
その矢先、知人に『事務所でも作ればいいのに』と言われて、やってみようと思ったんです。まさか、こんなに長く続いて大きな事務所になるなんて思いもしなかったですけど」
事務所の若者に伝えてきた「人間力」
ヘアメイクアーティストが所属する事務所とは、仕事の仲介となるエージェントとしての機能を持つ会社と、そこに加えてアシスタント制度を採用するなど、若手の修業の場としての機能を併せ持つ会社がある。ラ・ドンナは後者だ。藤原さんに憧れて事務所に弟子入りした若手アーティストたちは、次々に屈指の人気アーティストとして羽ばたいた。
「最初は私とマネジャーの2人でやるつもりで大きくするつもりはなかったんです。でも入りたいと志願してくれる子たちがいて、アシスタントになったら当然、独り立ちさせたいと思う。その責任感から、私なりに1人ひとりにやれるだけのことをやってきただけです」
では、いかなる方法で人気アーティストを何人も育て上げたのか。
「現場で学んでもらうほか、月に1度は練習会を開いていました。教えていたのは、主にメイクするときの姿勢とか腕の運び方とかフィジカルなこと。メイクって手先のテクニック以上に、全身の使い方が重要だったりするんです」
さらに、こだわって伝えたのは、自身も20代の頃から大切にしていた、人としての常識や思いやりだ。アーティストとしての個性やセンスが花開くのは、まず人間性が育って、次に基本的な技術が身についた後のことだと藤原さんは考えている。
たしかに、雑誌も広告もチームプレーだからこそ、クリエーティビティー以上に人間力が問われる。
弟子の1人であり、今や人気ユーチューバーでもある小田切ヒロ氏も、藤原さんから「メイクの学び以前に、もっと大切なことをたくさん学んだ」と自身の番組で語っている。
現場での臨機応変な対応力や、正直で思いやりある人間性、大胆な決断力……。そして、美を軸にしつつも、メイクだけではなく、ファッションやインテリア、生き方までもつなげて、読者に伝え続ける姿にも大いに影響を受けたと。
(この記事の後編:64歳で新しい仕事へ進む人に学ぶ転機のつかみ方)
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