世界遺産になった「フランスパン」に差し迫る危機 フランスで年間60億本売れでも厳しい現状
それはおそらくエッフェル塔やセーヌ川よりもフランス的である。毎日、何百万人もの人が腕に抱え、あるいは自転車の荷台に縛り付けて持ち帰る。それは、フランスパン「バゲット」だ。バゲットは、何十年もの間、フランスの生活のペースを作り、フランス人のアイデンティティの重要な一部となっている。
11月30日、国連教育科学文化機関(ユネスコ)は、バゲットを人類の保存に値するものとし、栄誉ある「無形文化遺産」リストに追加した。
バゲットを振りながらお祝い
この決定は、パンを作る技術的な知識以上に、薄い皮のパンが長い間象徴してきた生活様式をたたえるものであり、近年の経済の激変で脅かされていることも反映している。フランスでは村の空洞化が進み、農村部のパン屋は姿を消しつつあり、ヨーロッパでは経済危機によりバゲットの価格が高騰している。
バゲットを世界遺産に登録するための活動を主導したフランスパン・パティスリー連盟のドミニク・アンラクト会長は、「複雑な環境下での朗報だ」と語った。「赤ちゃんが歯を抜いたとき、両親はバゲットの切り株を与えて噛み砕かせる。子どもが大きくなって、初めて自分でする用事は、パン屋でバゲットを買うことなんです」。
フランスの代表団は、30日にモロッコのラバトで行われたこの発表を、バゲットを振りながら、伝統的なフランスのスタイルで祝った。
フランスのエマニュエル・マクロン大統領はこのニュースに反応し、ツイッターでバゲットを 「250グラムの魔法と完璧な日常生活」と表現した。そして、フランスの写真家ウィリー・ロニスによる、自分の背丈ほどもあるバゲットを小脇に抱えて走る少年の有名な写真を添付したのである。