世界遺産になった「フランスパン」に差し迫る危機 フランスで年間60億本売れでも厳しい現状

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今回、認定をうけたほかの文化――ヨルダンの羊肉と米の伝統料理マンサフ、ピレネーの村の冬の熊祭り、カンボジアの伝統武術ボッカタオなど――のリストを眺めると、まるで世界文化旅行のようだ。

フランス政府は、バゲットの地位向上に伴い、「バゲット製造に必要な職人的ノウハウの威信を高める」ための「ベークハウス・オープンデー」を設け、パン職人の奨学金やトレーニングプログラムを新たに支援する予定だという。

しかし、1970年以降、フランスでは年間400軒もの職人的なパン屋が失われ、バゲットは危機に瀕している。特にフランスの地方では、スーパーやチェーン店が伝統的な小さなパン屋を駆逐してしまい、その衰退は著しい。

ハンバーガーに売り上げを超された

さらに悪いことに、2017年以降、ハンバーガーの売り上げがジャンボンブール(バターを塗ったバゲットにハムを挟んだサンドイッチ)の売り上げを上回っているのである。

パリのパン職人の中には、今回のユネスコによる認定が、ロシアによるウクライナ戦争で小麦や小麦粉の値段が上がり続け、バゲットの値段をさらに上げざるをえなくなるという、彼らの最も差し迫った心配を軽減するという見方に懐疑的だ。

水曜日のニュースがあまり役に立たないのではないかと懐疑的な見方を示す人もいた。

シャンゼリゼ通りのパン屋のカウンターで昼時顧客の対応に追われていたパスカル・ジュセッピは、「今回のユネスコ認定は、私たちが冬を乗り切るためのものではない」と話す。「私たちには、まだ支払うべき大きな請求書があるのです」。

近くにいた別のパン職人、ジャン・リュック・オッサンは、「何も祝う気分にはなれない」と言い、指についた小麦粉を払いながら、この認定が「何も」変えないと不平を言った。「今思うと、これを口実にバゲットを値上げするかもしれない」とも言った。

(執筆:Catherine Porter記者、Constant Méheut記者)

(C)11月30日にユネスコの世界無形文化遺産に登録された、フランスパン「バゲット」。フランスと言えば、この細長のパンを想像する人も多いと思いますが、現地では町のブーランジェリーが厳しい状況に置かれているようです。2022 The New York Times 

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