大学の「研究力・競争力」が低下している根本理由 競争力向上に向けた取り組み「大学ファンド」

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瓶の中に入れられた硬貨
国内の大学の研究力の低下が問題視されつつある、その要因とは(写真:Burdun/PIXTA)
近年、国内の大学の研究力の低下が問題視されつつある。研究力低下の要因として考えられるのが、海外の大学と日本の大学との間で、研究環境の整備や学生および優秀な若年研究者の育成等に活用するための資金力・財政面の差です。この格差が年々拡大する状況にも懸念が示されています。
経済がわかる論点50 2023』の執筆者の1人でみずほリサーチ&テクノロジーズ調査部の川本隆雄氏が、日本の大学と海外の大学の資金力・財政面の差とそれを打開する「大学ファンド」の取り組みについて解説します。

深刻な研究力の低下

近年、良質な論文数の減少に見られるように国内大学の研究力が低下していることが問題視されつつある。また、低下しているのは研究力だけでなく、博士課程に在籍する学生が減少していることや、任期が限定的な採用形態の増加により若手研究者のポストが不安定化していることなどから、大学の競争力も低下しているのではないかとの懸念が示されている。

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競争力の低下は海外の大学と日本の大学との間で、研究環境の整備や学生および優秀な若年研究者の育成等に活用するための資金力・財政面において、その差が拡大していることが要因のひとつだと考えている。

たとえば、ハーバード大学やイエール大学は、それぞれ、4.5兆円、3.3兆円程度の基金を有しており、それを、研究環境の整備や学生および研究者向けの支援などに活用している。一方で、日本の大学では、最大の基金を有する慶応大学であっても、その規模が730億円にとどまっている。

この格差をうめるために創設されたのが「大学ファンド」だ

大学ファンドとは、科学技術振興機構(JST)が大学の研究環境の整備と優秀な若年研究者の育成等に資する助成を行うために、政府が拠出する資金と国立大学法人等から寄託された余裕金を管理・運用した資金のことだ。

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