東京駅から30分、日本最小「蕨市」の知られざる魅力 かつては城もあった!?「蕨」が見せる多面性

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それでも合併賛成が上回り、2003年12月、3市は法定合併協議会を設置、合併に向けた各種調整や新市名の公募も進められた。2004年5月には公募総数3万弱のうち約半数が「川口」を新市名とする公募案が出そろった。

そして同年7月の合併協議会で新市名が決定された。その新市名が公募5位の「武南市」であった。確かに3市のエリア内には武南警察署があり、まったく馴染みのない名前ではない。しかし、公募の票数から新市名が「川口」になるであろうと想定していた川口市民には青天の霹靂であり、猛反発が起こった。

この市民の猛抗議をうけ、同月内に川口市は法定協議会の離脱を決定。合併の中核となる川口市が離脱となったことで結果的に2004年9月に合併協議会は解散となり、3市合併は幻となった。そのため、蕨は今日も全国最小の市として残ることとなったのである。

ちなみに、鳩ヶ谷市と川口市は2011年10月に合併し、川口市となっている。

高齢化傾向は続いているが…

こうして現在も日本最小の市として残る蕨市。市の南から北西へ国道17号線が通り、市の東から北へ向けてJR京浜東北線、JR高崎線、JR宇都宮線、JR湘南新宿ラインが通る。4路線のうち、蕨市内に駅があるのはJR京浜東北線のみだ。

先述したとおり1960年代に人口が7万人に到達してからはほとんど伸びがなく、住宅地としてはほぼ開発されきり、住民の入れ替わりが多少あるという感じだが、高齢化の傾向は続いている。

住宅街の様子(筆者撮影)

それでも、旺盛な通勤・通学需要があることは駅利用者のデータをみるとわかる。

市内北部にある蕨駅は定期利用者が約70%(2021年度)。コロナ禍で20%強減少(2018年度との比較)したとはいえ、定期外利用者も減っているので、依然として通勤・通学需要が旺盛であることは変わりない。現在もラッシュ時に混み合う駅である。また、蕨市の一部を駅勢圏に含む西川口駅も定期利用者が約65%(2021年度)で、蕨駅と大きく変わるところはない。

また、駅の利用者数も多い。埼玉県内の京浜東北線の乗降客数でみても、大宮、浦和、川口に次いで多い。JR東日本の駅乗車人員で乗り換え路線がない駅としては5番目に多い(2021年度)。関東の大手私鉄を含めても乗り換え路線がない駅として蕨駅よりも利用者が多いのは小田急電鉄の本厚木駅のみだ。

コロナ禍前の2018年度でも、JR東日本の乗車人員としては乗り換え路線なしの駅としては7番目、関東の大手私鉄を含めると9番目と多い。また、市外ではあるが蕨市内を駅勢圏に含む西川口駅も蕨駅より1日あたり数千人少ない程度で十分に多い乗車人員となっている。

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