これを受け、8月13日に閣議了解された「平成6年度(同=1994年度)の概算要求について」では、「再び特例公債を発行しないことを基本」とすることが明記された。バブル崩壊のあおりを受けて税収が減る中ではあるが、原則として赤字国債を出さないと宣言したのである。政権交代前の自民党政権では赤字国債を発行しない財政運営をしていたから、野党に転じた自民党からルーズな財政運営との批判を避けたい狙いもあっただろう。
この赤字国債を出さない方針と歳入欠陥が、一見何の関係もなさそうな自賠責保険からの「借金」と密接に関係している。
自賠責保険からの「借金」はいかに浮上したか
1994年度予算では、1992年度の歳入欠陥約1.5兆円の補填を行わなければならないという重荷を負っていた。当時の一般会計当初予算は、歳出総額が約72兆円、公共事業費が約8兆円、文教及び科学振興費が6兆円弱だった。その中での約1.5兆円は大きい。
1991年2月からバブル崩壊に伴う景気後退が始まっており、その穴埋めを追加の増税で賄うことは難しかった。赤字国債は発行しないと宣言したわけだから、赤字国債で穴埋めすることもできない。
そこで考えられたのが、特別会計ですぐには使わない積立金を一時的に取り崩して一般会計に繰り入れることだった。一時的というのは、景気が回復するなどして一般会計の資金繰りが後に改善したところで一般会計から特別会計に繰り戻すという意味である。
1994年度予算において、自動車損害賠償責任再保険特別会計(当時)の積立金から8100億円が一般会計へ繰り入れられた。ほかにも、労働保険特別会計などからも同様の繰り入れを行った。
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