マスク氏「Twitter改革」に日本中が動揺するワケ もはや単なるウェブサービスを超えた存在だ
企業アカウントもまた、「見込み顧客」であるフォロワー資産を失うのは、大きな痛手だ。文体の面白さでファンを集めてきたのに、ある日突然、Instagramで「映え」を追求しろ……と言われても、なかなか難しい。いつしか「前は面白かったのにね」と、あの人は今状態になりかねない。
不安を知ってか知らぬか、マスク氏も日本市場を意識しているようだ。アメリカのIT系ニュースサイト「The Verge」は11月22日、同メディアが入手した音声をもとに、マスク氏が従業員ミーティングの中で、アクティブユーザー数を引き合いに出して、「ツイッターはアメリカ中心と思われがちだが、どちらかというと日本中心だ」などと発言したと報じている。
振り返れば、マスク氏は買収以前からツイートが活発だった。そんな新オーナーを「ツイ廃の同志」ととらえて、「俺たちのツイッターを守ってくれ!」と頼みの綱にしているユーザーは、かなり多いのではないか。
「意外とスポ根」な日本のネットとの親和性
そして、意外と「スポ根」の気質があるネットカルチャーと、マスク式の合理化がフィットした可能性も指摘すべきポイントだろう。
思えば、マスク氏買収以前のツイッターも、大きな仕様変更はたびたびあった。星型の「お気に入り(通称:ふぁぼ=Favorite)」からハート型の「いいね」に変わったり、ホーム画面が突如として時系列順ではなくなったり、Instagramの「ストーリーズ」を意識したであろう「フリート」が登場から1年足らずで廃止されたり……。
例を挙げればキリがないが、ざっくり言うと、いまひとつ「なぜ、この機能を実装・変更するのか」の納得できる理由が示されず、思いつきのように見える変更が行われていたことは、ここ数年とくに日本のツイッターユーザー間では不満のタネとなっていた。
筆者は、文化人類学者ではないので、あくまで「ひとりのネットサーファー」としての体感だと前置きしておくが、日本のネットユーザーは、コミュニティー内の「常識」から逸脱する人間に対して、容赦ないまでの非難を浴びせる傾向が見受けられる。ツイッターに限らず、2ちゃんねる(現在の5ちゃんねる)などもそうだったが、和を乱しかねないと判断した人間を晒しあげたうえで、私刑を加えるケースは珍しくない。
おそらく匿名前提なことが源流にあるのだろうが、縦社会のような同調圧力が存在し、リアルのつながりを起点とするFacebookやLINEなどとは、また違った生態系が形成されている。それが先に述べた「スポ根気質」だ。
これらの背景を踏まえると、ユーザーが考える「あるべきツイッター空間の姿」と、現状(旧体制の方針や施策)がかけ離れていると認識し、マスク氏を「救世主」だとみなしている可能性はある。
そういう意味ではマスク氏による一連の行動は、「(自分たちの大好きな)ツイッターを継続させる合理的な手段」として、一本筋が通っている印象を受けた人が多かったのだろう。
もちろん、大胆すぎるリストラには疑問・不満の声が多く寄せられているし、改革が急進的だとして嫌悪感を抱く人もいるだろう。だが、それすら好意的に受け止めている人が日本のツイッターユーザーに多いのは、数年にわたる不満の蓄積があったからなのだ。
だからこそ、日本のネットユーザーはマスク改革をこれだけ注目しており、なおかつ少なくない割合が前向きかつ、冷静に見つめているのである。
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