「社員のボランティア活動」と株価の意外な関係 参加が増えた企業と減った企業を比較した結果

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それでは社員のボランティアと株式パフォーマンスは関係がないのでしょうか。実はそうではありません。下図は別の角度から社員のボランティアと株式パフォーマンスとの関係を見てみました。ボランティア休暇制度の利用者が“増えた会社”と“減った会社”の株式パフォーマンスを比較してみたもので、分析期間や株式パフォーマンス計測の方法は先ほどの図と同様としています。

実質が伴わなければ株式市場で評価されない

図から棒グラフがマイナスとなった年は1回しかありませんでした。それ以外の8年はボランティア休暇制度の利用者が“増えた会社”が“減った会社”より株式パフォーマンスが上回りました。つまり、ボランティア休暇制度の利用者が“増えた会社”のパフォーマンスが良いことがわかります。

これらの2つの図から言えることですが、面白い傾向として、いくらボランティア休暇制度があっても、制度を利用しやすい環境で、実際に利用者が増えていく企業でないと、株式市場では評価されないということです。制度があるだけでサスティナブル経営に向けた“かけ声”だけが大きくても、実質が伴っていなければ、実際に休暇を利用したボランティアを行う社員も増えないでしょう。やはりその背後にある企業の文化や社員の姿勢が重要であることがわかります。

今回の分析から社員のボランティア活動への参加姿勢が強まる企業の株式パフォーマンスが高いことがわかりました。そしてボランティア制度があるだけで、実際に社員の活動が高まらない企業には株式投資をするうえで銘柄選別の際に注意が必要です。

吉野 貴晶 ニッセイアセットマネジメント 投資工学開発センター長

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よしの たかあき / Takaaki Yoshino

金融情報誌「日経ヴェリタス」アナリストランキングのクオンツ部門で、記録的となる16年連続で1位を獲得した後、ニッセイアセットマネジメントに入社。大学共同利用機関法人 統計数理研究所のリスク解析戦略研究センターで客員教授を兼任。青山学院大学大学院国際マネジメント研究科(MBAコース)で経営戦略、企業評価とポートフォリオマネジメントの授業の教鞭も取る。代表的な著書に『No.1アナリストがプロに教えている株の講義』(東洋経済新報社、2017年) 。

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