「社員のボランティア活動」と株価の意外な関係 参加が増えた企業と減った企業を比較した結果

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サスティナブル経営については、さらに発展した解釈が一般的となっています。先に触れましたが「自社の企業活動を、遠い将来に向けて続けていくための経営」がサスティナブル経営です。そのためには、平たく言えば「世の中のために悪い影響を与えることを減らして、良いことを行っていく」必要があるのです。少々、大ゲサにも聞こえるかもしれません。しかし、企業がサスティナブルに発展するには重要なことなのです。

先ほどの自動車メーカーを例に挙げて見ましょう。給料を増やして人手を確保したり、従業員研修などにも力をいれれば、企業にとっては目先の費用は増えますが、完成者検査不正を防げたとも考えられます。それだけでなく雇われた人の給料が増えれば、モノを買う余裕が生まれて、クルマを買う人も増えるでしょう。また、クルマの安全性を重視すれば事故を減らしていけるかもしれませんし、そうなればクルマの利用も増えるでしょう。

それだけではありません。“悪い影響を与えることを減らす”という観点では、排ガスの少ないクルマを作ることが上げられます。こうしたクルマが増えれば、環境への負荷が減り自然災害の頻発を抑える方向に向かうかもしれません。それが人々の幸福な生活にもつながり、クルマを買う人も増えていくでしょう。ちょっと壮大な話にも聞こえますが、サスティナブル経営は、遠い将来を見据えた企業へのメリットを目指していくものです。

社員のボランティア活動と株式パフォーマンスの関係

さて、サスティナブル経営の説明が長くなりました。社員が行うボランティア活動が重要と見られるようになったのは、サスティナブル経営への注目の高まりと大いに関係します。

サスティナブル経営では“世の中のために良いことを行う”ことが重要ですので、その1つが社員のボランティア活動です。企業が行う営業活動の範囲に限り、世の中の役に立つというだけでなく、ボランティアを通じれば社員の関心があるさまざまな分野で貢献することができるのです。これは企業のイメージアップの面でもサスティナブル経営の実践になります。

最近はボランティア休暇制度を持つ企業も増えてきました。有給休暇として扱われるボランティア休暇は、企業が休暇に相当する分の給料を負担しているわけです。サスティナブル経営を行ううえで、こうした配慮まで持てる企業は、経営の余裕もあり、それを評価して株式パフォーマンスも良好となるかもしれません。

次ページボランティア休暇制度が“ある企業”と“ない企業”で比較すると…
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