もちろん、運動習慣のない人が、この目標にすぐ到達することは難しいので、習慣化のためには1日2分からのスタートで十分です。
これまで一貫して報告されているのは運動することは乳がんのリスクを下げること、そして乳がんになってしまった患者は運動をすることで乳がんの再発、死亡のリスクを下げることができることです。そのため乳がん患者には積極的に運動を始めることが推奨されています。
しかし残念ながら筋力トレーニングが乳がんを予防するというデータで今のところはっきりと示されているものはありません。これは、女性でそれほど積極的に筋力トレーニングに取り組んでいる人が少ないために、研究で統計的に解析できるほどの人数を確保できないからではないでしょうか。少なくとも今乳がん患者にとって筋肉は非常にホットな話題なのです。
筋肉量が「乳がん」の予後を左右する
筋肉の量が乳がん患者の予後を決めることが報告されています。1年以内に乳がんと診断された471人の患者の予後が、筋肉量によって違いが生じるのかについて検討を行いました。
筋肉量の多寡は、若い女性を筋肉量で比べた時、とくに少ない2.5%に相当する人を、筋肉量が少ない(=サルコペニア)と定義しています。471人のうち、75人(16%)がサルコペニアと診断されました。
サルコペニアの人はサルコペニアではない人に比べて、5年後、10年後の生存率が明らかに低下し、その死亡リスクは2.9倍でした。サルコペニアの人は、筋肉量が正常な人に比べて年齢が高く、脂肪の量も少ない傾向であったため、この影響を取り除いた解析を行っても結果は同じく筋肉量が少ないと死亡リスクは上昇していました。
特に閉経後乳がんの患者(年齢55歳以上)ではサルコペニアの人ほど死亡リスクが高くなります。サルコペニアの人ほど、乳がんの抗がん剤副作用が出やすい傾向にあるため治療に伴う健康状態の悪化のリスクが高まります。そのため治療に先立って筋力を向上させたいと思うのですが、手術、抗がん剤、放射線治療などを行うため、がんになった後で筋肉を増加させることは簡単なことではありません。
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