医師が警告「便秘の人」が大腸がんに注意すべき訳 大腸がん予防には腹直筋を鍛えるべき理由

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大腸がん予防のためには便秘を改善することが必須ですが、先述のように便秘が引き起こされているメカニズムは様々です。食物繊維の摂取が少なく、動物性蛋白質・脂質の多い食事をしている場合は便の量が少なく、腸の動きを刺激しません。インスタントラーメン、チョコレートやスイーツ、スナック菓子などばかり食べていると食品添加物によって腸が炎症を起こしているかもしれません。

また年齢が進みホルモンバランスが乱れ甲状腺機能が低下しているかもしれません。食事を変えることは重要です。しかし多くの便秘で悩む人は食事だけを改善しても思ったような効果を実感できないことがほとんどです。

大腸がんを防ぐために鍛えるべき部位と筋トレ

こういった便秘を起こす様々な原因に対して共通して有効な方法は運動しかありません。運動は腸の炎症を抑え、甲状腺機能を改善する効果があるからです。

現在、僕が運営するオンライン健康スクールでは便秘の改善を期待して入校する方が多いのですが、食事の改善とともに運動、特に筋トレを実施するにつれて目に見えて便通がよくなることを経験しています。

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便通改善、大腸がん予防のためには重点的に2つの部位をトレーニングしていく必要があります。

1つは先ほど述べましたが、腹直筋下部や腹横筋などの「おなか周りの筋肉」です。排便時に必要な腹圧を上げて便秘を解消するために欠かせません。この部位を鍛えるための具体的なトレーニング例としては、「プランク」「レッグレイズ」などがあります。

そしてもう1つは「お尻周りから足にかけての下半身の筋肉」です。がん予防のためには大腸周辺のリンパの流れを良好にしておくことが免疫細胞を循環させる観点から望ましいのですが、大腸のリンパ流だけを改善することはできないので、腸のリンパ流と交通のある骨盤のリンパ流を改善することを目指して下半身の運動を取り入れます。

臀部(おしり)、大腿(太もも)、下腿(ふくらはぎ)の筋肉を十分に動かして、ダイナミックなリンパの流れを大腸の周りに循環させます。この部位を鍛えるための具体的なトレーニングとしては「スクワット」「カーフレイズ」などがあります。

石黒 成治 消化器外科医、ヘルスコーチ

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Seiji Ishiguro

消化器外科医、ヘルスコーチ。1973年、名古屋市生まれ。1997年、名古屋大学医学部卒。国立がん研究センター中央病院で大腸がん外科治療のトレーニングを受ける。その後、名古屋大学医学部附属病院、愛知県がんセンター中央病院、愛知医科大学病院に勤務する。2018年から予防医療を行うヘルスコーチとしての活動を開始。腸内環境の改善法、薬に頼らない健康法の普及を目的に、メールマガジン、YouTube、Instagram、Facebookなどで知識、情報を分かりやすく発信している。

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