作者の藤本氏は大学卒業後すぐに漫画家になったようで、就職活動はしていない可能性がある。そもそもアベノミクスの恩恵はなかったのかもしれない。
主人公デンジは「親ガチャ」の産物
しかし、「親の借金」を背負わされているという設定の主人公デンジの境遇は、最近の「親ガチャ」の議論そのものであることは重要だろう。アベノミクス下では、雇用好転により所得のジニ係数(不平等さを測る指標)は低下した一方で、強力な金融緩和によって金融資産価格が上昇したため、資産のジニ係数は上昇したという指摘がある。アベノミクスの「陰」の部分である。
「親ガチャ」という言葉は、2021年の新語・流行語大賞のトップテンに選出されたが(2021年10月15日付「『金融所得課税』で『親ガチャ』問題は解決できない」を参照)、藤本氏には、アベノミクスの「陰」の部分が見えていたのかもしれない。これが当コラムにおける筆者の結論(仮説)である。
前述したように、「チェンソーマン世代」にはアベノミクスの恩恵を受けてアベノミクスに肯定的になった人も少なくないだろう。一方で、「チェンソーマン」の流行を考えると、主人公デンジへの共感が集まるように、雇用環境の改善や資産価格の上昇から取り残され、「希望を最初から持ちえない」人も存在し、今もなお増加しているのかもしれない。
いずれにせよ、「景気と流行」や「経済とコーホート」の関係性は、やはりありそうだ。
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