ゆるミニマリストと称する人が目指す理想の生活 ミニマリズムとお片付けを足して2で割るような生き方

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やましたや近藤は、経験則をベースにしながらも、日常的な行為の範囲内に収まるメソッドとして体系化したことで、潜在的な呪術性をあまり意識させない自己分析・自己探求ツールに進化させたのだ。このため、「ゆるミニマリスト」「シンプリスト」は、ミニマリズムとお片付けを足して2で割ったようなハイブリッドと位置付けられるだろう。

ミニマリズムから原理主義的な部分をそぎ落とし、お片付けからは体系的なメソッドを取り除いて、単純に手法やエッセンスのみをうまく取り入れたのである。確かに、ミニマリズムを徹底するのは骨が折れるし、本格的なお片付けには特定の順序に従った作業とテクニックが必須なため、かなり労力を要する。よりお手軽なものに移行したといえる。

と同時に、これはミニマリズムやお片付けが一般化し始めた兆候でもある。YouTubeやインスタグラムなどを見渡すと、モノの手放し方から整理整頓でメンタル改善に至るまで、多種多様な実践と助言が日夜発信され、昨今では「終活」(自分の死後のための準備)の文脈で脚光を浴びており、老若男女を問わず高い関心を呼んでいる。

セルフメディケーション的なものとも結び付く

今後も、実行しやすいレベルにまで希釈されたミニマリズムやお片付けは、生活防衛、終活、健康増進、気分転換といったさまざまなニーズに応える知恵として広く浸透し、「セルフメディケーション」(自分自身の健康に責任を持ち、軽度の身体の不調は自分で手当てすること)的なものとも結び付いていくだろう。そして、現状を変えたいと思っている人にとっては、魔法のような気付きや癒やしをもたらすこともあるだろう。

なぜなら、今や何らかのダメージを負ったり、増大するリスクに疲労したりしたとき、手っ取り早く自分で自分をケアしなければならない社会状況があるからである。コミュニティの衰退や生活空間の市場化は、自己責任の範囲を拡大し、セルフケアの重要性は高まる一方にある。心身が良好で、回復力があることは仕事のパフォーマンス、プライベートの充実には不可欠であり、誰もがコスパの良い効率的なツールを欲している。

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