ここには、ミニマリズムというより日本のお片付けブームの影響が垣間見える。やましたひでこが提唱した「断捨離」は、モノへの執着を捨て、身の周りを綺麗にするだけでなく、心もストレスから解放されることが目的としている。
「こんまり」の愛称で知られ、片づけコンサルタントとしてあまりに有名な近藤麻理恵も、「片づけを通して自分の内面をみつめることで、『どういうものに囲まれて生きたいのか』自分の価値観を発見し、キャリアや人間関係など」の選択に大きな変革をもたらすと主張する(こんまり公式サイトより)。
要するに、「捨て活」のプロセスで「自分軸」「自分の好み」がみつかり、そこにお金や時間を集中できるようになり、仕事や交際も好転するというロジックが引き継がれている。近藤は『人生がときめく片づけの魔法』(サンマーク出版)で、「大量の名刺を捨てたら、会いたいと思っていた人から連絡がきて自然と会えるようになった」エピソードを出し、「片づけをすると人生がドラマチックに変わります。それはもう、100%といっていいくらい」と明言した。
お片付けが「白魔術」的な儀式として機能
やましたは、「家の中の詰まりを取り除いていくうちに、ドーッと『見えない世界』どころか『もっと見えない世界』からの応援が来る」と述べ、「運気というのは、実は自分で変えられる」と断言している(『新・片づけ術 断捨離』マガジンハウス)。これは文化人類学的には、お片付けが「白魔術」的な儀式として機能していることを示している。金運や恋愛運を上げたり、合格祈願などでお守りを求めたりするなど、古くからあるおまじないである。
祈願やお守りとの大きな違いは、自己分析・自己探求の実践が、原因と見えない力の間に入ることだ。神仏にすがるという非日常的な行為ではなく、お片付けという日常的な行為に自己変革を目指すメソッドを組み込んでいるので、自分で自分の運命を切り拓いている実感がより鮮明になるのが特徴といえる。お片付けの「白魔術」的側面を図にすると以下のようになる。
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