このようなルーツを持つミニマリズムが日本に入ると、低成長時代であったことも手伝って、エリート層の物質主義に対する反動の側面は薄れ、節約と節制という生活防衛、雇用や報酬の不安定さから身を守るサバイバリズム(生存主義)の側面が強くなっていった。また、お金が貯まる貯蓄術、お金を増やす資産運用の要素まで加わることになった。
とりわけ注目すべき点は、極限まで「減らす」ことが目的化する原理主義的な傾向の人々が少なからず現れたことだ。これは「個人にとっての適量を尊重」「家や自動車の所有の有無は関係ない」とするアメリカのミニマリズムにはない発想だった。脱消費主義的な生き方へのシフトこそが重要であって、何が大切なモノか、どれだけ必要かは究極的には人それぞれだからである。
理想とする整った空間、美意識の具現化
整えアドバイザーでゆるミニマリストの阪口ゆうこは、「暮らしやすさより、ものを減らすことが優先されるのは、違う」と述べ、あくまで手段としてミニマリズムを活用したと強調している(『片付けは減らすが9割 ゆるミニマリストが教えるがんばらない整理術』ぱる出版)。モノを減らすことを優先すると、美しいデザインの家具や、カーテンなどの装飾を犠牲にすることになり、せっかくの生活の場が貧相になるからである。
最も大事なのは、自分が理想とする整った空間、美意識の具現化といえる。極端な「捨て活」はやめて、機能性重視の生活術と美意識重視のおしゃれのバランスを最適化する方向性といえる。自分の趣味に合う調度品やファッション、住まいをセルフプロデュースすることが重要なのであり、それがさまざまなメリットにつながるという確信がある。
例えば、あるインスタグラマーは、モノを減らし、自分好みに厳選されたモノだけで生活空間を満たした結果、「物欲がコントロールできるようになった」「掃除が楽になった」「お金と時間に余裕ができて心が安定する」「好きな人と過ごせる」といった変化を挙げる。ゆるミニマリスト生活によって、幸福度が上がり、自己肯定感が上がると評価している。
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