あの「チャップリン」模倣俳優を軒並み訴えたワケ ディズニーが憧れた類いまれなビジネスセンス
世界初のカラーによる短編アニメ『花と木』(1932年)がアカデミー賞に輝くなど、映画界で確固たる地位を築いたウォルトは、さらなる挑戦に乗り出します。初の長編アニメ『白雪姫』(1937年)の企画です。
アニメと言えば短編作品しかなかった当時、前代未聞の長編アニメの企てには誰もが反対しました。しかし、そんな中でチャップリンだけは彼を応援します。そして、長編作品の極意として「主人公に感情移入するためのストーリーの大切さ」を伝授しました。
ディズニーはストーリー会議の時にスタッフの前ですべての役を演じて見せるのが常だったのですが、彼の演技はチャップリンそのものだったと側近たちは証言しています。
キャラクタービジネスを「伝授」
創作面だけでなく、ビジネスについてもチャップリンは多くのことを授けました。『白雪姫』はあまりに大胆な企画ゆえ配給の交渉が難航したのですが、チャップリンは「これを参考にしなさい」と『モダン・タイムス』の経理書類一式を見せて、ディズニーはその通りに映画館と交渉して映画は大ヒットしました。
経理上の秘密を開示したことには驚きますが、惜しげもなく伝授したことで業界全体を盛り上げてパイを大きくしたわけで、先輩ビジネスマンの心得のようなものも感じます。
その後、このエンタメ界の師弟は二人三脚で映画界に新しいビジネスを興すことになります。前述の通り、チャップリンはキャラクターの権利を法的に確立した人物となったわけですが、ウォルトはそのノウハウを受け継いで、ミッキーマウスをはじめ多くのキャラクターでグッズ販売を展開します。早くも1930年代前半に、ディズニー社ではグッズ販売が映画の興行収入を超えるまでになりました。
今や一大産業となっているキャラクター・ビジネスはチャップリンが発明し、ディズニーが大きく育てたものだったのです。
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