香りの効果で認知症予防、「脳の活性化」促す理由 朝晩のアロマ使いでイライラが治まった人も

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アロマの効果は、記憶障害の改善にとどまりません。認知症と聞くと、もの忘れをイメージする方が多いと思いますが、集中力や判断力の低下なども起こり、日常生活や人間関係にも大きな影響を及ぼします。

私が代表理事を務めている一般財団法人日本アロマ療法創造機構と、認知症ケアラボラトリーおれんじしっぷは現在、10カ所以上の介護施設で、介護現場で起こる困りごと(暴言・暴力・拒否・徘徊・抑うつ・無気力などの症状)の程度と頻度をアロマの使用前・使用後で比較する検証を行っています。

怒る回数が減った80歳の患者さん

80歳のアルツハイマー病の患者さんは、イライラ、そわそわされることが多かったのですが、この方のイラ立ちの原因を観察し、“生活のリズムが乱れたことによる慢性的な疲労感や倦怠感がイライラの原因ではないか”と見立てました。

そこで、アロマを染み込ませたシールを胸元(肌着の上や衣類の裏側など)に貼り、1カ月様子を見ました。使ったアロマは朝は刺激を与えるローズマリーカンファーとレモン、夜はリラックスできる真正ラベンダーとスイートオレンジです。これは、“交感神経と副交感神経の働きを促進させて、覚醒と睡眠のリズムにメリハリをつけることによって体調が整い、感情が快適な状態になり、負の感情を引き起こす行動が減らせるのではないか”という仮説に基づいて選んだものです。

すると患者さんは穏やかになり、それまで1日に5、6回怒っていたのが、1回程度にまで減りました。さらに興味深いことに、その後、再びシールなしで1カ月間過ごしていただいたところ、怒る回数が検証前に戻ってしまいました。

今回の検証で確認できたのは、“快の刺激によって望ましい行動が引き出される効果”と、“快の刺激がなくなることで望ましくない行動が再開してしまうという現象”でした。香りによって体調と感情を整えるアプローチは継続的に行う必要があるものの、一時的ないやしの効果を超えて、望ましい行動を作り出す影響力があることを確認できたのです。

このようにアロマで心の状態を整えると、イライラなどの症状が落ち着くことを日々、実感していますが、最大の効果は患者さんの症状が緩和されることで、介護する家族やスタッフの負担が減ることだと思っています。私が介護の現場で検証を続ける理由もそこにあります。

認知症に関しては、発症を遅らせたり、症状の進行を緩やかにしたりする、いわゆる二次的な予防について研究が進んでいます。そのなかで、適度な運動やバランスのよい食事、良質な睡眠、余暇活動などが重要であることがわかってきています。

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