中国のアパレルEC「SHEIN」日本で爆売れの"ナゾ" 東京・原宿に「常設ショールーム」を出店する

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もっとも、こうした批判はSHEINにとって大した逆風にはならないだろう。SHEINは2021年以降、サプライチェーンに対する行動規範やバリューチェーン全体の温室効果ガス排出量の削減計画を公表し、批判や疑念の払拭に努めている。

いずれにしろ、サステナブルへの姿勢に疑義を呈する人々はそもそもSHEINのターゲット層ではない。SHEINは最初から、奨学金を抱えたアメリカの大学生のような経済的余裕がないがおしゃれを楽しみたい女性を顧客基盤としてきた。

サステナブルの潮流が大きくなろうとも、「安さ」の価値は普遍だし、世界的なインフレの時代、安さが正義と考える消費者は増えているのだろう。

今後のライバルはSHEINを模倣する同業

SHEINがほかの中国企業と決定的に違ったのは、中国の消費力とEC市場が爆発的に成長し、世界中が中国市場を狙っていた2010年代前半に、あえて北米に狙いを定めたことだ。もちろん大変な苦労があっただろうが、中国市場を攻めなかったからこそ、アリババのようなECの巨人にのみ込まれることなく、ひっそりと着実にシェアを広げられた。

中国市場で大成功した中国企業のグローバル化は簡単ではないが、アメリカで大成功した企業なら先進国に横展開もしやすい。そして多くの中国EC企業がSHEINの成功モデルに知見を得て、新たなブランドを立ち上げてアメリカ市場に進出を始めている。

SHEINはつねに既存のファストファッション大手が競合とされるが、今後の真のライバルはZARAではなく、模倣を得意とする中国の同業なのかもしれない。

浦上 早苗 経済ジャーナリスト

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うらがみ さなえ / Sanae Uragami

早稲田大学政治経済学部卒。西日本新聞社を経て、中国・大連に国費博士留学および少数民族向けの大学で講師。2016年夏以降東京で、執筆、翻訳、教育など。中国メディアとの関わりが多いので、複数媒体で経済ニュースを翻訳、執筆。法政大学MBA兼任講師(コミュニケーション・マネジメント)。新書に『新型コロナVS中国14億人』(小学館新書)。
Twitter: @sanadi37

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