ディズニーが「独自動画」強化に招き入れた人材 「ドライブ・マイ・カー」のプロデューサーが転身

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ディズニーでの仕事はドラマの配信が中心になると思う。僕自身、これまで映画だけでなく、ドラマも作ってきたので、(映画とドラマの)垣根は感じない。ただ両者は「語る時間」が違う。ドラマは劇場より何倍も長い。1話ごとに区切り、次を観てもらうために1話ごとの盛り上がりも必要になる。

ドラマの最大の利点は、登場人物のキャラクターをより深く掘っていけるところだ。

僕がかつて衝撃を受けたドラマに、『ブレイキング・バッド』というアメリカのテレビドラマがある。登場人物の人間性が深く描かれ、しかもその関係性が大きく変わっていく。そして視聴者がその目撃者になる。

ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』のような読後感。ドラマを見終わったときは、登場人物の人生の秘密が、こちら側に開かれているという感覚になった。

映画でも可能だが、ドラマであればより丁寧に人物を描いていくことができる。それは恋愛ドラマでも、コメディでも、ホラーでも、ジャンルは問わない。

1日で脚本15ページを撮る日本の現場

山本晃久氏
山本晃久(やまもと・てるひさ)/1981年生まれ、兵庫県出身。映画『彼女がその名を知らない鳥たち』『寝ても覚めても』『スパイの妻』などを手がけ、第25回新藤兼人賞プロデューサー賞、第45回エランドール賞プロデューサー奨励賞を受賞。映画『ドライブ・マイ・カー』では第74回カンヌ国際映画祭脚本賞、第94回米国アカデミー賞国際長編映画賞などを受賞。C&Iエンタテインメントを経て、現在はウォルト・ディズニー・ジャパンにてプロデューサーとしてコンテンツ制作に携わる(撮影:今井康一)

――成田さんと共有する「業界が抱える問題」とはどういうことですか。

作品を作るときに十分な準備期間がなく、クオリティを上げられるのにそれができないという歯がゆさがあった。いろいろな事情があるが、そこは資金面、さらに業界に関わる人たちの意識の問題が大きいと思う。

『ドライブ・マイ・カー』は準備という意味ではいい時間がとれたといえるが、撮影日数は40日程度。これを海外の人に言うととても驚かれる。海外では撮影に最低で2カ月、通常は3カ月以上かけるからだ。

撮影ペースは、古い時代には1日で脚本の2~3ページを撮っていたと聞く。そうすると役者もスタッフも集中できる。でも、僕は1日15ページ分を撮ることもあった。どう撮ればいいんだろう、そういう状況があった。

予算についても、脚本に対して適正な予算はなかなか確保できない。プロデューサーとして、脚本の中でこれはできて、これはできないという取捨選択にいつも迫られていた。

――そうした問題はディズニーに来て改善されたのでしょうか?

撮影中の作品に関しては、演出と制作の連携がとてもよくとれている。1日2~3ページとはいわないが、1日4~6ページとか、良いテンポで撮影できているのでは。週1~2日の撮影休暇も取れている。

一方で制作期間が長くなると、ロケに行くと季節が変わってしまうこともあって(笑)。これからはスタジオをもっと活用していきたい。

――予算規模も従来とずいぶん違いますか。

自分がやってきた環境と比べれば、間違いなく予算規模は大きくなった。

適切な人材を確保し、一定の期間をかけてやれば、予算が必要なのはある意味当然のこと。具体的な数字は言えないが、物語に対して適正な対価を払うことができていると思う。

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