「平家にあらずんば人にあらず」放言した男の末路 公家でありながら武士の力で成り上がり…

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「平家にあらずんば人にあらず」平家はやがて滅亡へと向かう(写真:ひろゆき/PIXTA)
「平家にあらずんば人にあらず」――誰もが知る名ぜりふだが、じつはこの発言を残した平時忠は、平清盛を頂点とする「武士の平家」の出身ではなく、「公家の平家」の出身だったという。
人気歴史学者・呉座勇一さんの新刊『武士とは何か』では、源義家から伊達政宗まで中世武士の行動原理に迫っている。本稿は同書を一部抜粋し再構成のうえ、平時忠に関する記述をお届けする。

「平家にあらずんば人にあらず」

日本史に興味がある人なら「平家にあらずんば人にあらず」という言葉を聞いたことがあるだろう。平清盛率いる平家一門のおごり高ぶりを象徴する平時忠(たいら の ときただ)の発言として有名である。

この発言は『平家物語』に由来する。岩波書店刊の『日本古典文学大系』などの古典全集に収録された『平家物語』には「この一門にあらざらん人は、みな人非人なるべし」と書かれている。ただし『平家物語』には多くの種類の写本がある。古典全集は『平家物語』諸本のうち「覚一本(かくいちぼん)」という琵琶法師が語るために作られたとされる本を典拠とする。

一方、『平家物語』の中で最も古い形態を残すと考えられる「延慶本(えんぎょうぼん)」は読み物として編纂された系統で「この一門に非ざる者は、男も女も法師も尼も、人非人たるべし」と記している。

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